「被害に遭った人たちは、健康になれると信じて…」 4年前の取材でぶつけた質問 from 大阪社会部
体質なのか、薬を飲むと本来の効能だけでなく、副作用も出やすい。何かと市販薬を飲む機会が増えたせいか、わがことながら働き始めてから知ったのだが、最近飲んだ薬で眠くなり、改めて思い出した。 それで困った一つが、咳(せき)止め薬。有効成分に腸の働きを抑える効果があり、私の場合、服用して便秘になり腹が突っ張るような痛みがあった。体調悪化を疑ったが、これまでにない感覚に別の病気を疑い、怖くなる。冷静になって思い浮かんだのは副作用。説明書にも書かれているし、調べればすぐに分かる。理由が分かれば、症状をみながら服用を止めるか、同じ効能の別種の薬を試せばいい。 だが、理由も対処も分からず体調の悪化が進む恐怖は計り知れない。小林製薬が製造・販売した「紅麹(べにこうじ)」のサプリメントによる健康被害は発表から2カ月余りが過ぎ、5月29日時点で死者5人、入院者284人に及び、原因究明は続く。 思い出したのは福井県あわら市の後発薬メーカー「小林化工」の取材だ。令和2年12月、経口抗真菌剤に睡眠導入薬の成分が混入した健康被害が判明した。その背景に、ずさんな製造管理態勢があり、当時の社長は「出荷に間に合わせるために場当たり的な対応が常態化していた」と説明した。 一連の取材中、会社側にこんな質問をしたことを覚えている。「被害に遭った人たちは、健康になれると信じて服用したのではないのか」。期待への大きな裏切りはサプリメントであっても同じはずだ。(藤谷茂樹)