「偽造書類は見破りようがない!?」...《不動産取引のプロ》であるデベロッパーでさえ騙されてしまう地面師たちの巧妙な「手口」
「見やぶりようがない」
「うちの場合、印鑑証明を偽造され、それに気づかないままでした。取引に立ち会ったこちらの司法書士も騙されています。司法書士の力量の問題もあります。ただ、事件に遭遇し、いろいろ聞いて回ると、最近の地面師たちは不動産取引に必要な書類を偽造するというより、同じ物をつくれるらしい。 たとえば印影さえあれば、3Dプリンターを使って実印を作り、本物と見分けがつかないほど精巧な書類を偽造する。見破りようがないケースも少なくありません。また偽の実印を使って改印し、新たな印鑑証明を作り直す。そうした行為を繰り返せば、どの時点で書類が偽造されたか、わからなくなるから厄介です」 そう悔しがるのは、東京都内でマンション開発を広く手掛けてきた地道建造(仮名)という40代の不動産会社の経営者である。事件の発端は2015年5月のことだ。同業の不動産業者から、渋谷区富ヶ谷にある住宅地の取引を持ち込まれたという。 「もともとの紹介者は、僕が独立する前に一緒に働いていた大手デベロッパーの先輩だった神津三四生(仮名)さんでした。神津さんも今は会社を経営しています。長年の付き合いもあって信頼のおける人なのは承知していました。 不動産業界では知人や取引先からの紹介を受けていっしょに事業をやることも珍しくありません。だから深く考えずに話に乗りました。神津さんが見つけてきた物件の購入資金を私が調達して物件を買い、さらに大手デベロッパーに物件を転売してマンションを建てる事業計画でした」 『ある「職業」の存在が“鍵”...《不動産のプロ》でも簡単に騙されてしまう「社会的信用」の罠とは』へ続く
森 功(ジャーナリスト)