能役者に学んだ「離見の見」 ルーティーンはテレビ中継をフル再生「どんな顔をしていたのか」 課題の先発陣再建にも手ごたえ ソフトバンク小久保監督単独インタビュー③
ソフトバンクの小久保裕紀監督(52)の単独インタビュー「一瞬に生きる」の第2弾をお届けします。3、4月で貯金12をつくり、開幕ダッシュに成功。就任1年目、ここまでの戦いぶりを振り返ってもらいました。全3回の3回目は課題としていた先発陣の現状や自宅でのルーティーンも明かしてくれました。(聞き手・構成=小畑大悟、大橋昂平) ■全3回の① 「5番近藤」は想定外? 柳町達が1軍昇格するには… ◇ ◇ ◇ ―課題としてきた先発陣も安定している。リリーフから転向した大津、モイネロの存在も大きい。 「(昨年、2軍監督のとき)1軍の試合はかぶっていないときは(テレビで)見ていたので、(大津は)先発をさせたら面白いんじゃないかなと思っていました。先発陣をどうしようかという中で倉野(投手)コーチと話をしていて、大津の先発が面白いと意見が一致したので。モイネロも(昨年の)帰国前には先発にチャレンジするからと伝えていました」 ―大津は球種も多彩で先発向きと考えた。 「あとは体力面の心配だけなのでね。年間通していきなり毎週ローテーションを守りなさいとは言わないし、思っていないので。どこかで休息を与えようと思っていますね」 ―6連戦の少ないゆとりのある日程もプラスに働いている。 「初めての監督ですが、先発を6枚すぐに用意しなくて良かったというのは、日程的にかなり助かりましたね。あとは(6連戦が3週続く)交流戦のときですね。どういうふうに持っていこうかと考えています」 ―昨年に比べ、エース級が相手の試合も粘った末に白星をつかんでいる。 「でも紙一重ですよね。(4月27日からの西武戦で全てサヨナラで)3連勝したけど、3連敗でもおかしくなかったと正直に思っている。延長で(相手が)三塁にランナーがいってもゼロでかえってくるとかね。『あ~点を取られるかな』と思いながら見ているんですけど、三塁までいかせてもホームを踏ませないとかね。今、いい位置にいて貯金もできましたけど、簡単に野球がなんて全然思えないですよね。やればやるほどまさに紙一重だなと。紙一重で勝てるかどうかはやっぱり凡事徹底というか、自分たちがやろうと決めたことを主力、若手関係なくやり通せるか。それを続けていけたら勝ち運にも恵まれるんじゃないかなと思っています」 ―3、4月を終えて、一つ目の区切りとなるか。 「まず一つ、打席的にも1カ月ぐらいはある程度、(様子を)見ようかなと思っていました。ウォーカー(の再調整)はちょっと早かったんですけどね。将来的には絶対に必要なので、(ファームで)状態を上げてきてもらいたい。まだ相性どうのではないですけど、ある程度数字も出てきているので。最初は(様子を)見ようというふうに思っていて、それはやりました。これから次の段階に入っていきますね」 ―5月末には交流戦も始まる。 「交流戦では6連戦が3週続くので、先発ローテーションどうするのかと。野手のことはあまり考えていないですけどね。野手はどこで柳田、近藤をDHを使いながら休ませるか。うまく年間を通して高いパフォーマンスを維持できるようにマネジメントしようと思っています」 ―読書量も増えているとうかがった。最近、心に刻んだ言葉は。 「最近響いた言葉は離見の見(りけんのけん)ですね。(能役者)世阿弥の言葉ですけど、自分が役者として演技をしている姿を客席から見ているという。今の言葉で分かりやすく言ったら客観視するということでしょうね。自分が監督としてチームを率いている映りを見ています。基本的には試合を全部(録画した)テレビの中継で見直しているので。ナイター、(翌日)デーのときはパパッと飛ばすけど、それ以外のときはほとんど丸1試合を見直す中で、どの選手がこういうシーンでどんな顔していたのか。自分が(カメラに)抜かれたときにどういう顔だったとか。客観視して、ファンの目線として(中継映像を)見ているので、それは大事だなと思っています」 ―公式中継の映像を全て見直している。 「(家に)帰ってから見ています。帰って晩ご飯を食べながら。(イニング間などの)コマーシャルは早送りしますけどね。球団が用意してくれている打ったところだけの映像ではなく、テレビ中継のフル映像を見直すというのをルーティーンにしているので。この選手、あのとき、こういう風にしていたんだなとか細かく分かるんですよ。それは離見の見。自分自身を客観視するというのはテレビの映像を見るのが一番いいんです」 ―開幕からたくさんの観客も入っている。これから見てもらいたいところは。 「まあポイントというか、全部は勝てないのでね。負け試合であっても『ここを見られて良かったね』というのを何とか残そうとしています。それをメッセージとして伝えたいですね」
西日本新聞社