【オーストラリア】「純粋無垢」な氷、豪のバーで クラモト氷業、現法設立
金沢の老舗製氷会社「クラモト氷業」がこのほどオーストラリアに現地法人を設立し、飲食業界での存在感を高めている。江戸時代に金沢から幕府に氷を献上していたことにちなみ、「金澤氷室」ブランドの飲食用氷を主力商品とする同社は、高い品質を武器に海外展開を加速中だ。カクテル人気の高いオーストラリア市場に向け、2025年に年間100トンの輸出目標を掲げている。【オセアニア農業食品専門誌ウェルス編集部】 クラモト氷業の蔵本和彦社長は編集部の取材に対し、「オーストラリアのカクテルシーンは盛り上がりをみせ、良質な氷を求めるバーテンダーが増えている」と指摘した。オーストラリアの消費者は可処分所得が高く、カクテル市場は今後も成長し高品質な氷への需要も拡大すると予想しているという。 23年に創業100年を迎えた同社の氷は、金沢の軟水を2日以上かけて、ゆっくりと攪拌(かくはん)しながら凍らせたもの。ミネラルなどの不純物がほとんどないため透明度が高く、溶けにくく雑味もない。さまざまなカクテルを楽しむオーストラリアでは、ハイエンドの飲食業界からの需要が高まっているという 同社によると「グラスの半分を占める氷に対し、ハイクラスのバーほど気を配っている」という。そうした販売単価の高い高級バーやレストランが同社の主な販売先だ。 ■かき氷市場は高ポテンシャル 同社は23年にオーストラリアへの輸出を開始。同国最初の販売は日本式かき氷用の氷だ。東京・渋谷の人気かき氷店「セバスチャン」がオーストラリアに進出する際に引き合いがあったという。オーストラリアではかき氷は比較的新しい食品だが、「セバスチャン・カキゴオリ」がメルボルンに出店したほか、シドニーには「カキゴオリ・カイジ」が店を開くなど、専門店も進出している。両店ともクラモト製の氷の使用を前面に出し、高品質をアピール中だ。蔵本社長は「オーストラリアの日本式かき氷市場はポテンシャルが高い」と述べた。 一方、かき氷は氷1ブロックから削り出す商品点数が多く、単価は低い。季節的な需要変動もあることから、同社がもう一つの柱としているのがカクテル用の氷事業だ。カクテル用は求められる氷の形状が多様でその分利益率も高い。同社は一般的なキューブ型だけでなく、スティック型や丸型、カチワリ氷なども取りそろえる。 クラモト氷業は今年4月、メルボルンに現地法人を設立した。蔵本社長は同社の強みを営業力と企画力だと強調。日本の純氷文化を伝えながら、カクテル用の氷はレストランやバーに、純氷を使ったかき氷用の氷はレストランやカフェを対象に提案型アプローチをしているという。 同社は25年までに納入先を80店舗へ拡大することを目指している。 ■豪への輸出を3倍に 蔵本氏はまた、オーストラリア市場は同社の進出が先行する米国市場に似た傾向があるとした。19年に進出した米国市場では現在、約300店の飲食店に納入している。同国への輸出は20年12月期時点の1,000万円から、23年12月期の7,000万円に拡大した。輸出量は19年の6トンが23年の240トンに増加。24年には400トンを見込んでいるという。 進出間もないオーストラリア市場では物流の整備が課題だとするものの、米国での経験を基に解決は可能という。すでにブリスベンやシドニーでも営業を展開中。顧客も獲得している。 蔵本社長は「かき氷もカクテルも氷を使用する入り口だと考えている」という。オーストラリアでの氷需要を開拓し、現在の輸出量約30トンを来年には3倍に拡大する計画だ。