ドラフトでのオリックス6位指名を巡る「謎の20分間中断」の真相は…取り下げた「X」はスタンフォード大の佐々木麟太郎だったのか?!
さらに社会人に進んだ場合、高卒は3年、大卒は2年契約ができず、中退選手については、ドラフトの年の4月1日以降に退学した選手は対象外となることも規定されている。海外のプロチームと契約した選手についての規定はあるが、海外の大学へ進んだ選手については、メジャーのような年数制限や年齢制限などの規定はない。 またプロ志望届は、翌年卒業見込みでの高校、大学生を対象にしたもので、卒業生に届け出の必要はない。つまりオリックスが、指名するつもりだった「X」が佐々木だったとしても、規定上は、なんら問題はなかったのだ。 なのになぜNPBは「どうしますか?」と暗に指名の取り下げを求めたのか。 米国の大学へ進学した選手に関しての規定がない盲点を突く形で、オリックスがスタンフォード大との事前の協議もないまま、ドラフト指名を強行した場合、野球界における“日米関係問題”に発展する恐れや、今後、日本からスタンフォード大への進学を目指す選手へ影響を及ぼす可能性もある。 加えて過去に例のない形でのチャレンジを決め、難関を突破して授業料や寮費を免除される待遇で、この9月から晴れてスタンフォード大生となり、11月から始まる公式戦や、来年2月から始まる大学リーグを待つ佐々木が、それを蹴ってまで6位指名のオリックス入団に舵を切ることも考え辛い。 これまで日本と外国の二重国籍を持ち、海外の学校に在学、あるいは在学していた選手を指名したケースはあった。昨年はヤクルトが育成1位で台湾の鶯歌工商に在籍していた高橋翔聖投手を指名。2022年には日ハムが育成3位で米テキサス大タイラー校中退の山口アタル外野手を指名した。いずれのケースも球団側が事前にNPBと連絡をとり、対象選手であることを確認した上でドラフトにかけられていた。 だが、今回オリックスは、情報漏れを恐れたのか、それとも規定ではドラフトの対象選手であることから改めて確認の必要がないと判断したのか、NPBへの事前確認もなく、ドラフト会議の場で、いきなり6位指名で、佐々木と見られる名前を入力したと思われる。テーブルでの20分間で、NPB側は、指名した場合に危惧されるそれらの問題を丁寧に説明したとみられ、ルール上、何も間違ったことはしていなかったオリックスも納得した上で佐々木の指名を取り下げたと推測される。 ただ今回の問題は、これからも起こりうる可能性がある。年々、球児のメジャー志向が高まる中で佐々木が切り拓いた米大学へ進学するパターンが成功すればなおさらだろう。来年のドラフトで、今度は、しっかりとした段取りを踏んだ上で、オリックスを含むどこかの球団が佐々木を指名する可能性も否定できない。 佐々木は6月からメジャーへの登竜門とされるMLBドラフトリーグへ参加。25試合に出場して、86打数19安打で打率は.221と低かったが、満塁弾を含むリーグ2位タイとなる4本塁打をマーク。17打点でOPSは.782の数字を残し、国内外の評価を上げた。NPBは昨年より「海外の学校に在学中の日本人選手」との交渉期間については、国内の在学選手の翌年3月末に対して7月末まで延長したが、さらに時代に即した規定の追加や整備が必要なのかもしれない。 (文責・RONSPO編集部)
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