カブール陥落は「インテリジェンスの失敗」か?:リスクを甘受した米国が「次の戦争」に抱く危機感
「認識」しても防げるとは限らない
Copyright (c) 2021 SHINCHOSHA All Rights Reserved.
筆者は、カブール陥落を「インテリジェンスの失敗」としてとらえるのは正しくないと考えている。歴史を見れば、インテリジェンス部門が評価を誤ったり、重要な情報を見逃したケースは数多くある。9.11テロ事件もその1つだ。しかし、インテリジェンス部門は全能ではない。彼らの適切な情報評価に基づき、政策部門がリスクを認識していたとしても、そのリスクを防げるとは限らない。カブール陥落はまさにそこに当てはまる。むしろ、なぜアメリカはリスクを甘受したのか。その背景にこそ重要な意味がある。 日本語では、「インテリジェンス」も「インフォメーション」も訳語としてともに「情報」があてられることが多い(「インテリジェンス」は「諜報」と訳されることもある)。しかし、「インテリジェンス」は「インフォメーション」と同義ではない。「インテリジェンス」とは、政策決定の観点から必要な「インフォメーション」を選別し、評価したものである。 では、カブール陥落は、アメリカの「インテリジェンスの失敗」だったのだろうか。インテリジェンス部門の作成した評価自体は公表されていないから、各種報道を元にそれを考えてみたい。
本文:2,789文字
購入後に全文お読みいただけます。
すでに購入済みの方はログインしてください。
高橋杉雄