「チケットは秒で完売」4年ぶり女優復帰の沢尻エリカ 舞台『欲望という名の電車』で感じた“女優魂”
沢尻エリカが帰ってきた。 俳優復帰第一作で且つ初舞台となった『欲望という名の電車』が2月18日に東京公演の千秋楽を迎えた。 【タイトル】沢尻エリカ クラブやレイヴパーティで見せていた”下着姿”でセクシーダンス姿 チケットが発売開始されて、大げさではなく数秒でソールドアウトとなり、話題になった作品だ。そんな舞台を先日、観劇してきた。 ’19年11月、麻薬取締法違反の容疑で逮捕され、懲役1年6ヵ月・執行猶予3年の有罪判決が言い渡された沢尻は、芸能活動休止を余儀なくされ、初公判において、女優業復帰は考えていないことも公表していた。 しかし沢尻復帰を望む声は消えることがなく、その声に応えるべく、約4年ぶりに俳優としての姿を見せることになった。 芸能界には“お騒がせ”という修飾語が付いた俳優やタレントが数多いるが、彼女はそのトップクラスにランクインしていると言ってもいい。それでいて、“不要論”が決して出てこない俳優でもある。 沢尻といえば、思い起こされるのは「別に!」騒動だろう。 詳細は省くが、舞台挨拶で放った一言で、あれほど大きな騒動になるとは本人も予想できなかったのではないか。キャリアはあったが二十歳前後の若い女優が、虫の居所が悪かったのかちょっとばかりふてくされた態度を見せただけで、なぜそんなに叩かれなければならないのか、不思議に思った覚えがある。 騒動の最中、彼女のご機嫌が直らないまま映画のプロモーションのため、朝の情報番組に出演したことがあった。そのとき一緒になったのだが、スタジオのあの空気は今でも忘れられない。小柄な沢尻からは、もちろんオーラも出ていたが、それよりも“殺気”の方が強かった。 「お疲れ様でした」 と挨拶だけはしてくれた。その後ろ姿は、“誰も寄せ付けない”という堅固なバリヤーに包まれているように見えたが……。 もう17年も前の出来事だが、その後も映画、ドラマに出演を続け、私生活でも常に話題を提供し、存在感が薄れることはなかった。その沢尻も今年38歳になる。 『欲望という名の電車』は’47年にブロードウェイで初演されたテネシー・ウィリアムズの最高傑作と謳われた作品。’51年にはヴィヴィアン・リーとマーロン・ブランドの出演で映画化もされている。 本公演で沢尻が演じるのは主人公のブランチ・デュボア。相手役のスタンリー・コワルスキーは伊藤英明が演じる。 ストーリーは特に難解ではない。しかし、彼女が演じたブランチは“難役”だ。 舞台は第二次世界大戦終結後のアメリカ南部。かつては大地主の家に生まれ育ったブランチは夫の死後、故郷を離れ、元兵士の工場労働者スタンリーと結婚した妹のステラの下に身を寄せる。 落ちぶれたにもかかわらず過去に執着するブランチと粗野なスタンリーはそりが合わず衝突するようになる。しかしスタンリーの同僚のミッチと知り合ったことで、新たな希望を見いだすが……。 ところがスタンリーに過去の秘密を暴露され、ミッチに捨てられることに。その上スタンリーに暴行されて、ついに心が崩れていく。 虚構と現実の間を彷徨いながら壊れていくヒロインという難しい役だ。 だが、沢尻は幾度となく公演を重ねて台詞が体に染みついているかのように、多くて長い台詞はよどみなく、まるでブランチが憑依したかのようだった。 推し量ることができないブランチの喜怒哀楽、その心情が沢尻から伝わってくる。沢尻といえば、儚さ、切なさを演じさせたら右に出る者はいないと言われていたが、この舞台で再確認できたといえよう。 余談だが、沢尻を取材した記者たちはみな男も女も、 「沢尻はやっぱりいいね」 と口を揃える。重い内容の舞台だったが、カーテンコールの沢尻には、記者たちを虜にしたあの笑顔が戻っていた。 初舞台に臨んだ沢尻は、雑誌のインタビューでこう語っている。 《この舞台に向けて一点集中。というのも、演技の世界に戻ると決めた今、私のなかに初めて“夢”ができたんです。どんな夢か? …それはまだ、自分の心のなかだけに留めさせてください》 果たしてどんな夢なのか。その夢がある限り、もう躓くこともないだろう。 公演の回数を重ね、この素晴らしい作品が代表作になることも可能だ。沢尻が事件を乗り越え、誰からも愛される女優になることを期待してやまない――。 取材・文:佐々木博之(芸能ジャーナリスト) 宮城県仙台市出身。31歳の時にFRIDAYの取材記者になる。FRIDAY時代には数々のスクープを報じ、その後も週刊誌を中心に活躍。現在はコメンテーターとしてもテレビやラジオに出演中
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