2軍で無双→1軍昇格も「本当は嫌でした」 大打者に“浴びた”2000本目…なぜか叱られた19歳
17登板で2勝2敗1セーブ…掴んだ飛躍への足掛かり
2試合目の登板となった7月11日のロッテ戦(川崎)では、リリーフでプロ初黒星。“ミスターロッテ”有藤道世外野手には通算2000安打となる三塁線二塁打を許した。「2000本を打たれた後、花束贈呈とかでちょっと間があくじゃないですか。僕は何をしたらいいんだろうと思って、飛んできた紙テープの芯がそこらへんに転がっていたので、ずっとそれを拾っては投げていました。それは覚えていますね」と苦笑する。 「それからベンチに戻ったら福本(豊)さんに『何であんなバッターに打たれるんだ!』って言われました(笑)。“いえいえ2000本打っている人なのに”って思いながらも、何かレベルの高い話でスゲーなって。もうその時、福本さんは2000何本も打っていたわけですからね」。大物揃いの1軍での日々は昇格時の予想通り、毎日が衝撃で、毎日が緊張の連続だった。5試合目登板の7月29日西武戦(西宮)でプロ初勝利をマークしたが、それは開き直りの結果という。 2回途中から先発・今井雄太郎投手をリリーフし、7回2/3を1失点と最後まで投げ切って白星をつかんだが「(それまでの登板で)フォアボールを結構だしていたし、これでは打たれてもそうだし、フォアボールを出しても絶対2軍だろうなって思って、もうボコボコに打たれて2軍におりようって決めてマウンドに上がった。(捕手の)藤田(浩雅)さんが外に構えても全部ど真ん中でいいやと思って投げたんです」と言う。 「そしたら何か知らないけど、インハイのいいところに行くんですよ。“藤田さんのリード通り投げられなくてごめんなさい”と思いながらも真ん中しか目掛けてなかった。それまでは抑えたいって欲が出てフォアボールになっていたと思うんです。もうそういうのが嫌で、それだったら真ん中狙っちゃえ、どうせ2軍なんだからっていう感じでね。まさに開き直りです。三振も9つくらい取れたんじゃなかったかなぁ」 打線も援護してくれた。「0-4で登板したんですけど、あれよ、あれよという間にね。(8回裏に2点勝ち越して7-5となり)リードして最後は誰かが行くと思ったら、そのまま投げさせられたのでびっくりしましたけどね。最後は田尾(安志)さんをカーブでセカンドゴロダブルプレー。後で考えるとそうやって使ってくれたんですよねぇ」と感慨深げに振り返った。 8月15日の近鉄戦(平和台)でプロ初先発。10月7日の近鉄戦(藤井寺)でプロ初セーブ。10月13日の南海戦(西宮)では6回3失点で先発でも白星を挙げた。「その試合はリリーフで今井さんが行ったんですけど(3回無失点でセーブ)、あとで『1人で投げろや』って文句言われました。“交代させたのはベンチなのに”と思いましたけどね」と笑う。当初は気乗りしていなかった1軍で、いろいろ経験させてもらったわけだ。 2年目は17試合に登板して2勝2敗1セーブ、防御率4.47。1年目は2軍でも打ち込まれていたのが、がらりと変わった。「キャンプで先輩の見よう見まねでね。みんなアウトローから入るわけですよ。それはかなり練習しましたね。あとは緩急をうまくつけられるようになったのかなと思います」と自己分析したが、野球人生はここからどんどん上昇気流に乗っていく。
山口真司 / Shinji Yamaguchi