30m超の巨大津波が予想される“南海トラフ地震”とは? 「臨時情報」が出たら家族ですべきことも解説
8月8日に宮崎県で最大震度6弱を観測する地震が発生し、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が出されました。今後、高い確率で発生が予想される南海トラフ地震はどんな地震なのでしょうか。「南海トラフ地震臨時情報」が出たときに家族で必要な対応などについて、ジャーナリストの一色清さんが解説します。小中学生向けのニュース月刊誌『ジュニアエラ2024年11月号』(朝日新聞出版)からお届けします。<前編>「「南海トラフ地震臨時情報」、発表されるとどんな影響があるの? ジャーナリストがわかりやすく解説」から続く 【図】南海トラフ地震に備えるチェックリストはこちら ■今後30年以内にM8~9クラスの地震が70~80%の確率で発生 今、日本で警戒されている巨大地震はおもに三つあります。一つは南関東に大きな被害をもたらす「首都直下地震」です。もう一つは東北沖から北海道沖にかけての太平洋側を震源とする「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震」です。 そしてあと一つが、駿河湾(静岡県)から日向灘沖(宮崎県)の太平洋側を震源とする「南海トラフ地震」です。三つのうちもっとも大きな被害をもたらすと想定されているのが、南海トラフ地震です。 南海トラフとは、地球を形づくっている岩板であるフィリピン海プレートとユーラシアプレートが接する海底の深い溝のことです。二つのプレートが沈み込むことにより、ひずみがたまり、それが限界に達してはね上がることで巨大地震が起きます。 南海トラフ沿いでは繰り返し大きな地震が起きています。間隔は100~150年です。前回は1946年の南海地震ですから、80年近くたっています。そのため、専門家の会合では「今後30年以内にマグニチュード(M)8~9クラスの地震が起きる確率は70~80%」としています。
海底で起きるとされるため、津波の発生が想定されます。太平洋沿岸の広い地域で10mを超える大津波が到達し、最大で高知県では34m、静岡県では33mと予想されています。死者・行方不明者の予想は約23万1千人、建物の全壊および焼失棟数の予想は約209万4千棟です。2011年の東日本大震災の死者・行方不明者が約2万2千人、全壊が約13万棟なので、南海トラフ地震で予想される被害の大きさがわかります。 ■臨時情報が出たらすぐに家族で話し合いを わたしたちができるのは、備えることです。日ごろから水や保存できる食料、カセットコンロやボンベ、簡易トイレ、懐中電灯などを用意しておくことが必要です。 また、避難場所を確認しておくことも大切です。特に海に近いところに住んでいる人は高いところにある避難場所を知っておかなければなりません。 実際に「巨大地震警戒」や「巨大地震注意」の南海トラフ地震臨時情報が出たときには、すぐに家族で話し合って備えや避難場所の再確認をしましょう。家族はいつも一緒にいるわけではないので、連絡方法や落ち合う場所などについても場合分けをして確認しておくことが必要です。断水に備えて風呂に水をためておくことや、家具の固定なども忘れないようにしましょう。 <前編>「「南海トラフ地震臨時情報」、発表されるとどんな影響があるの? ジャーナリストがわかりやすく解説」から続く キーワード 南海トラフ地震臨時情報 南海トラフ地震発生の可能性が高まった場合などに、気象庁から発表される情報。南海トラフ沿いでマグニチュード(M)6.8以上の地震等の異常な現象を観測後、5~30分後に南海トラフ地震臨時情報「調査中」が発表され、2時間後以降に、M8.0以上なら「巨大地震警戒」、M7.0以上8.0未満なら「巨大地震注意」が発表される。どちらの場合も、少なくとも1週間は地震への備えを再確認し、「警戒」の場合、津波避難が間に合わない地域では事前避難も行う。 〇一色 清 ( いっしき・きよし)/ジャーナリスト。朝日新聞経済部記者を経て、「アエラ」編集長などを歴任。「報道ステーション」「グッド!モーニング」(ともにテレビ朝日系)のコメンテーターも務めた。
一色清