【現地ルポ】「がんばる気も失せた」能登豪雨で家屋半壊…住民から“復興の気力”を奪い去った「2度めの災害」
9月21日、石川県輪島市や珠洲市を襲った猛烈な豪雨は、1月に発生した能登地震の被災地に、新たな被害をもたらしていた。 【画像】地震の次は…能登半島を襲った豪雨の“爪痕” 輪島市の山沿いにある久手川町では、塚田川が氾濫。大量の樹木や土石流が4棟の住宅を飲み込んで押し流した。普段は幅が5~7mの小規模な川だったが、大量の土砂は幅数十mにまで広がっている。 中学3年生の喜三翼音(きそ・はのん)さんの家は、基礎部分だけを残して根こそぎ流されていた。地元の石川県や、大阪府、滋賀県、名古屋市などから応援に駆けつけた消防や警察とともに、父親の鷹也さんが、翼音さんの捜索活動にあたっていた。 「今日(23日)が勝負かもしれません」 鷹也さんはそう声を絞り出した。 21日は、鷹也さんが仕事に出かけ、母親は1歳の次女を連れて保育所へ。長男はサッカーの練習試合で外出し、家には長女の翼音さんだけが残った。午前9時半すぎには、LINEで翼音さんから鷹也さんに、濁流の映像とともに「ドアが開かん」「逃げる場所がない」という訴えがあったという。その後、鷹也さんの携帯に着信があったものの、折り返してもつながらなかった。「その時点で、家が流されたと思います。電話に出られず、後悔しかないです」と鷹也さんは語った。 同じ久手川町の住民(50代女性)は、家屋の流出は免れたものの、家のなかに押し寄せた土石流の片づけに追われていた。輪島市内で鮮魚店を経営し、能登地震の後も店を再開してやってきたが、地元の住人が減り、店が成り立たない状態だったという。そこにきて、また家が襲われた。 「地震のときに家は半壊になりました。でも、どうにか2階で寝泊まりできていたんです。避難所もたいへんだし、車中泊では狭くて寝られませんでしたから。この家を修復しようと思っていたら、またやられました。もうこの家には住めないでしょうね。でももう、避難所は嫌だしね。鮮魚店も、まわりのお店がどんどん閉めてしまって、買いに来るお客さんも減って、店もたたまないといけないかもしれません。今後のことは何も考えられないですよ」 20代の女性住民は、地震で半壊になった自宅を見に来て、ぼう然としていた。 「自宅は地震で半壊し、傾いたままなので、ここには住んでいませんでした。自宅前の道路は隆起したままで、市に何とかしてほしいとお願いはしていますが、順番があるのか、まだ直しに来てくれません。自宅を見に来たら、家のなかにも土石流が入り込んでいて。なんとか復興がんばろうって気持ちでやってきましたが、もうがんばる気も失せました。がんばりたくないですよ」 1年に2度もの災害に直面した能登。復興の光は、いまだ見えてこない。