サッカー日本代表戦開催の広島新スタジアムのすばらしさ 首都圏での球技場新設はまだ?
【空港に隣接していた広島スタジアム】 1992年には、広島で第10回アジアカップが開催された。 それまで、日本はアジアカップにはあまり力を入れていなかったが、1994年のアジア大会のプレ大会としてこの大会を招致したのだ。そして、ハンス・オフト監督率いる日本代表がこの大会で優勝し、カズ(三浦知良)やラモス瑠偉などが活躍したことによって、翌1993年のJリーグ開幕を控えてサッカー界は大いに盛り上がった。 そして、この大会で守備的MFとして活躍したのが、地元広島所属の森保一だった。 すでにビッグアーチも完成しており、サウジアラビアとの決勝戦はビッグアーチで行なわれたが、どういうわけか準決勝は空港のそばの小さな「広島スタジアム」が会場だった。 僕は、仕事の関係で東京と広島を何度も往復しながらこの大会を観戦していたが、準決勝の日も羽田空港から飛行機に乗って観戦に向かった。 飛行機の到着時刻は第1試合開始ぎりぎりだったが、とくに急いではいなかった。 というのは、僕はサウジアラビア対UAEが第1試合で、日本対中国の試合は第2試合だとばかり思い込んでいたからだ。 ところが、である。飛行機が着陸しターミナルに向かって走っている時、窓の外を見ていたらスタジアムの電光掲示板に「日本対中国」とあったのだ。それで、慌てて資料を見てみたら、日本対中国の試合が第1試合だったのだ。 「やばっ!」 もうすぐキックオフだ。僕は飛行機を降りるとターミナルビルからスタジアムまで一気に走った。そして、なんとかキックオフに間に合ったのだ。 日本対中国戦に間に合ったのは、まさにスタジアムが空港から走って行けるくらいの近距離にあったからだ。いや、スタジアムが遠かったら滑走路からスタジアムの電光掲示板など見えず、僕は日本の試合は第2試合と思い込んだままだったろう。
【西日本には球技専用の新スタジアムがいくつも完成】 日本におよそ5万人を収容する競技場がたった3つしかなかったような時代を思えば、広島に近代的なサッカー専用スタジアムが完成したというのは、まさに隔世の感がある出来事だ。 そういえば、この数年で西日本には球技専用の新しいスタジアムがいくつも完成した。 2016年完成のパナソニックスタジアム吹田をはじめ、サンガスタジアムby KYOCERA、(2010年から改修工事を重ねてきた)ヨドコウ桜スタジアムといったスタジアムだ。今年も広島だけでなく金沢ゴーゴーカレースタジアムも開場したし、10月には長崎スタジアムシティも完成する予定だ。 いずれのスタジアムも、試合がない日にもさまざまな形で人々が集うコミュニティーの中心となる施設ばかり。いずれも、30年前には考えられないようなスタジアムだ。 ところで、新スタジアムの建設ラッシュに沸く西日本はともかく、東京や横浜など首都圏のクラブは、今でも2002年日韓W杯前に作られた古いスタジアムを使用している。しかも、その多くが陸上競技兼用なので必ずしも観戦環境がいいわけではない。 しかも、これらのスタジアムも間もなく築30年を迎えて、老朽化する時期にかかっているのだ。 首都圏のクラブも、そろそろ新スタジアム建設について考えないといけないのではないだろうか......。
後藤健生●文 text by Goto Takeo