乃木坂46・山下美月がアイドル最後の写真集で表現したかった「リアル」
誇れる部分は「辛抱強さ」
“自分らしさ”を表現することに大事にしていたからこそ、“完璧なアイドル”とは違った部分を見せることにも躊躇しなかった。そして、写真集のラストにはアイドル人生を振り返るエッセイを収録。特別な武器がない自分に劣等感を抱き、自信が持てなかった時期の苦悩が赤裸々に綴られている。アイドルを志す前は子役として活動していたものの、ほとんどオーディションに受からず、演技に対して苦手意識もあった。なかなか自分を認めることができなかったからこそ、人一倍努力してきた自負がある。 「私はアイドルとして特別に秀でていた部分が本当になくて。歌もダンスも、周りのメンバーより自分が凄いとは思えなかったし、自分の武器が何だったのか……今でも分かっていないところがあります。でも、自分にはできないことが多いことを知っていたからこそ、新しいことに挑戦して自分の可能性を広げたいという気持ちを持ち続けていて、ドラマのオーディションを受けてみるとか、自分から行動を起こすことを大切にしてきました。 女優として役をもらえるようになってからはアイドル活動との両立が大変で、我ながら『よくできたな』と思えるような忙しい日々を過ごしていたのですが、それでも心が折れてしまうことはなくて。ファンの方々やメンバー、スタッフさんに支えられながら、どんどん強くなることができて、その“辛抱強さ”は誇れる部分かもしれません。今後、一人での活動がスタートして芸能界の厳しさに直面しても、ある程度のことは耐えられる自信があります(笑)」
幸せになるきっかけも、自分を変えるきっかけも、自分次第
乃木坂46のような大人数グループで自分にスポットライトが当たる機会は少ない。それでも地道に努力を続けていれば、必ずチャンスが巡ってくる。NHK連続テレビ小説『舞いあがれ! 』でヒロインの親友役に抜擢された山下は、現役アイドルでも女優業で目覚ましい結果を出せることを証明してみせた。 「誰でも目の前に何かしらのチャンスが巡ってくるタイミングがあるはずですが、それに気づくことができなかったり、見て見ぬフリをして逃げてしまうこともありますよね。そうやってチャンスを逃してしまったことが私にもありました。でも、全部のチャンスに対して絶対に手を伸ばすべきだとは思っていなくて、『ここぞ! 』という瞬間に力を発揮できるような準備をしておくことが大切。その泥臭いメンタルもアイドルには必要だと思っています」 乃木坂46の最新シングル『チャンスは平等』は、センターを務める山下の信念を色濃く表現した楽曲だ。 「生きていると理不尽な状況に直面することもあるし、私も世の中に平等なんて存在しないと思ってしまう瞬間もあります。でも、 チャンスって分かりやすく目に見えないものではないですよね。だとしたら、やっぱり誰にでも平等に訪れるものなのかな……と思っています。結局は、自分次第。幸せになるきっかけも、人生を変えるきっかけも、自分で気づくしかありません。そのための準備を日々怠らないことが大事だと、後輩たちには伝えていきたいですね」 インタビューを通して、何を聞いても理路整然と自分の考えを語ってくれることが彼女の特徴。壁にぶつかる度に自問自答することから逃げなかったからこそ、不屈のメンタルを培うことができたのかもしれない。 「考えすぎることは自分で自分の首を絞める行為かもしれません。でも今回、初めてエッセイを書かせていただいて、自分の人生を俯瞰してみたら、これまでたくさん悩んできた時間がムダじゃなかったことを再確認できたんですよね。 頭でっかちで生きてきたことが、不正解じゃないんだと思えました。もう24歳なので、今後はもう少し肩の力を抜いて生きて行きたいですが(笑)」 ■山下美月さんプロフィール 1999年7月26日生まれ。東京都出身。2016年、「乃木坂46 3期生オーディション」に合格してデビュー。2018年、乃木坂46の20 thシングル「シンクロニシティ」で初の選抜メンバー入り。女優として近年は連続テレビ小説『舞いあがれ! 』、ドラマ『下剋上球児』、『Eye Love You』などに出演。今後は出演映画『六人の嘘つきな大学生』が2024年11月に公開予定。 ■写真集インフォメーション 乃木坂46山下美月2nd写真集『ヒロイン』 乃木坂4646を卒業する山下美月が贈る、アイドル人生最後の写真集。撮影地は映画やエンターテインメントの聖地であるアメリカ・ロサンゼルス。愛してやまない映画の世界にどっぷりと浸かったり、つかの間の夏休みを思い切り満喫したり……刺激をたっぷり受けて躍動する等身大の姿を余すところなく収録。2024年4月23日発売。¥2500(小学館)
浅原 聡