<躍進の先に―22センバツ日大三島>/中 自信と経験、花開く エース兼4番の松永 /静岡
打球がグラブに収まったのを確認すると、初制覇の瞬間をかみしめるように、丁寧に一塁に送球した。35年ぶりの県勢対決となった2021年秋の東海大会決勝。松永陽登(はると)(2年)は聖隷クリストファーの最後の打者を投ゴロに打ち取り、仲間とマウンド上で歓喜の輪をつくった。 21年秋は、チームの躍進の原動力となった。全11試合に登板し、8試合を完投。防御率は2・46と安定した。一方、打率は5割1分3厘を記録。20安打、18打点と合わせてチームで3冠だ。東海大会は全3試合に登板し、満塁本塁打を含む6安打10打点と、初優勝の立役者でもある。「(活躍の要因で)一番大きいのは、気持ちの部分」。1年秋から「エース兼4番」の経験を積み重ね、着実に自信をつけていった。 中学時代は主に野手として活躍した。しかし、高校に入学して最初の練習で、小学生のときに経験した投手を志願する。「投手の役割は試合の大半を占めるし、活躍すれば勝ちにつながる。やりがいがあると思った」。当時の3年を中心に臨んだ20年夏の県独自大会の終了後から投打の中心となった。 ただし、試合の結果はついてこなかった。20年秋は県大会2回戦、21年春は東部地区大会で敗退する。その年の夏の県大会は4回戦まで進んだが、甲子園に届かなかった。それでも「4番を張り続けたこと、エースとして投げ続けたことが、自信になっていった」。 迎えた21年秋。「自信と経験」が、ついに花開く。県大会準決勝の静岡戦で、延長十回を2失点で投げきり、手応えを得る。東海王者として臨んだ11月の明治神宮大会は、強打で九州大会を制した九州国際大付(福岡)を相手に「制球重視の打たせて取る投球」で8回2失点と好投。チームは1―2で惜敗したが「強豪相手に(自分の投球が)通用するイメージを持てた」という。 今季は技術的な修正にも取り組んだ。セットポジションで投球する際、「よりスムーズに投球動作に入れるように」と、グラブを構える位置を胸の前から腰の辺りに下げた。また、直球がシュート回転するのを防ぐため、左脚を挙げた後に左腕を捕手の方向に伸ばして一旦、制止するフォームに変更。「体の開き」を抑える工夫を重ねた。 松永の存在は、ほかの選手にも刺激を与えている。1番を担い、2番手投手としても期待される京井聖奈(せな)(2年)。東海大会は3試合で計2安打と調子が上がらなかった。決勝は先発もしたが、3回途中で松永にマウンドを譲った。「松永に頼ってばかりいられない」。練習で積極的に松永のもとに歩み寄り、打席でのタイミングの取り方、投球の考え方などについて、助言をもらっているという。 松永も「『自分が引っ張っていこう』という考えはない」と語る。日大三島が掲げるのは、あくまで「全員野球」だ。【深野麟之介】