【#佐藤優のシン世界地図探索㊸】ゲームのできる国/できない国
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT OpenSourceINTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * ――北朝鮮のミサイルがロシアの支援を得て、射程距離1万5000kmの大陸間弾道弾ICBMとなりました。あとは、確実に機能する大気圏再突入用ノーズコーンと核弾頭、そしてその弾頭を搭載可能な重さにするだけです。これらをロシアは北に教えるのですか? 佐藤 今のままならば、助けます。脅威は「能力×意志」ですので、北の意志として、そのミサイルがロシアに向かわないためです。 ――日本には来ますか? 佐藤 日本に対しては、すでにある中距離弾道ミサイルのままで十分です。北が相手にしているのは米国です。 在日米軍基地をミサイル攻撃しても、米国が日本を守るために出て来るかどうか、北は非常に懐疑的なんじゃないですか。一昔前までグアムにミサイルを撃ち込めば、米軍が出て来るかと思っていたら、出て来そうにないのが現状です。 ならば、ニューヨークやワシントンのホワイトハウスに正確に落としてやると言って、同時にその性能のあるミサイルを作ることで、米国がやっと対北交渉に出て来るのではないかとの目算です。 私は、北がホワイトハウスにミサイルを命中させる気構えでやれば、多分、米国は出て来ると思います。 ――究極の外交ですね。 佐藤 そうですが、北はずっと瀬戸際外交をやってきていましたからね。また、米国大統領がトランプになれば、すでに北とは信頼関係があるので、話はできるという算段なんでしょう。 ――そのミサイルを発射する時に、金正恩総書記だけでなく、"女将軍"と呼ばれる娘のジュエ氏がいるのはなぜですか? 佐藤 娘が可愛いということだけでなく、権力継承者の有力候補だと示唆したいのでしょう。 ――この女将軍が北のトップになるとどうなるのですか? 佐藤 北はあくまでシステムだから、彼女が国家のトップになってもうまく回っていくんじゃないでしょうか。北は強いし、北を倒す強い動機を持った国家もないですから。 ――なるほど。 佐藤 逆に韓国が半島を統一して核保有国になったりしたら、面倒臭くなります。それはその時の韓国大統領によってブレが激しいから。北の外交は、ブレないじゃないですか。 ――はい。 佐藤 それに、北は民意によって体制がひっくり返されることはありませんし。 ――それは絶対に不可能であります。すると、韓国統一半島国家で核保有国となると、核ミサイルの飛ぶ方向が、あちらこちらに。もしかしたら日本に向いたりする......。 佐藤 「日本をやれ」なんて声が出てきかねませんからね。だからそう考えると、北みたいな国家があって、力を分散していたほうがいいわけです。 ■ドイツとポーランド