「食材を作ってくれた人と一緒に感動したい」 料理マスターズ受賞のシェフが目指す地産地消〈宮城〉
仙台放送
食文化の伝達に貢献した料理人を国が表彰する「料理マスターズ」のシルバー賞を仙台市内の中国料理のシェフが宮城県内で初めて受賞しました。受賞の決め手となったのは「地産地消」。徹底的に宮城の食材を使いメニューを作り上げています。 黒森洋司シェフ 「これがクロモリのスペシャリテ。宮城に来て、フカヒレを食べたいと言ってもらえるためのお店だと思っているので、これは絶対手を抜けない一品です」 飯田菜奈アナウンサー 「しっかり歯ごたえも感じるんですけれど、柔らかさもあるので、口の中で噛んでいるうちにほろほろっとほどけていく」 黒森洋司シェフ 「気仙沼っていう街がある宮城県において、どこよりもフカヒレがおいしくないといけないというのが自分の中で決めていることで、フカヒレ料理に関しては、世界中どこのお店にも負けないという自信を持って作っています。クロモリが宮城にいる意味だと思います」 太白区向山にある中国料理店「楽・食・健・美-KUROMORI-(クロモリ)」 オーナーシェフの黒森洋司さんは、食文化の伝達に貢献した料理人を国が表彰する「料理マスターズ」で2018年にブロンズ賞を受賞。そして今年、シルバー賞を受賞することが発表されました。宮城県内のシェフがこの賞を受賞するのは黒森さんが初めてです。特に評価されたのは地域の食材を生かしたメニューの開発です。 黒森洋司シェフ 「ブロンズを獲ってからさらに生産者の方とコミュニケーションを取って、より生産性のある宮城のものを表現できたこと。そこに尽きるので、自分一人の賞ではないですね」 この日、黒森さんが訪れたのは仙台市内の農園。レタスや中国野菜を栽培しています。 黒森洋司シェフ 「毎日、みんなのところに行くわけじゃないですけれど。1カ月に1回、半年に一回行くところもあるし、毎週1回行くところもある。料理人だけじゃ料理は作れなくて。こうやって(食材を)作ってくれる方がいて初めて使えて。そうじゃないとお客さんに提供できない。だから、信頼できるパートナーをどれだけ多くつかまえるか」 黒森さんの思いは生産者にも伝わっています。 しばさき農園 柴崎勝央さん 「シェフの料理に対するすごく丁寧なところとか、細かいところにこだわっているのがわかってきて、それに応えられるようにと思って、私たちは頑張るだけかなと思ってやっています」 黒森さんは産直市場にも足しげく通います。 産直市場みんな野 村上なをみ店長 「週に1度とか2度とかいらっしゃってくれます。(他の)シェフってどっちかっていうと寡黙で、見合わないものは買っていかないというだけで何も話してくれない方が多いので、やっぱりお話できる関係は素敵だなって思います」 そんな黒森さんが作る地産地消の料理を、さらにご紹介します。 黒森洋司シェフ 「大根を大根よりおいしくするためにどうするかっていうので作った、大根餅」 飯田菜奈アナウンサー 「外がカリッとしていて、中の大根の部分はとろとろでおいしいですね」 黒森洋司シェフ 「宮城の大根がおいしい時にだけ作る点心。全部宮城県産ですね。固める米粉から全部宮城のもの」 つづいては、角田市の斎藤ファームの豚を使ったチャーシュー。 飯田菜奈アナウンサー 「外側はカリッとしていて、中のお肉はすごくしっとりしていますね」 黒森洋司シェフ 「最初から最後まで炭で仕上げています。宮城県産の炭で、宮城の豚を焼き上げる」 野菜や肉といった食材だけでなく、調味料や炭に至るまで、宮城県産・地産地消という徹底ぶり。実は黒森さん、神奈川県出身の北海道育ち。縁もゆかりもなかった宮城に店を構えたのは、東日本大震災がきっかけでした。 黒森洋司シェフ 「料理人として、宮城に中国料理の食材が多いというのは昔から知っていて、料理人の立場で復興の何かお手伝いができないかなと」 長年東京の有名店を中心に腕を振るってきた黒森さんでしたが、震災が発生した2011年に宮城県に移住。しばらく県内の店で料理人として勤めたのち、2014年に「楽・食・健・美-KUROMORI-」をオープンさせました。カキやホタテ、フカヒレ、そしてニンニクやネギといった香味野菜に至るまで「宮城は中国料理を作るためにある場所だ」とまで感じたといいますが、最初は苦労の連続でした。 黒森洋司シェフ 「震災直後ということもあって、メーカーさんがどこもお付き合いをしてくれなかったんですね。自分で買い出しするところから始まって、徐々に。最初はお客さん伝いから、生産者の方とちょっとずつつながっていって」 少しずつ時間をかけて宮城の食材を生かした料理を作り上げていった黒森さん。 黒森洋司シェフ 「今の宮城をこんなに食べられてよかったというのをまず感じてもらいたい。宮城のお客さんに来てもらった時には、地元にこんなに良いものが実はあったんだということを、再発見してほしい。喜んでくれた料理を、素材を作ってくれた人にフィードバックして一緒に感動したい。それが本当に楽しい毎日」 熱い思いを胸に、日々腕を振るいます。
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