女優・松下由樹、「心の底から声を出して涙流すぐらい、笑うってすごく解放される」
15歳でデビューし、コンスタントに第一線で活躍している松下由樹さん。トレンディードラマからコメディーまで、さまざまな役を演じ続けてきた。次なる挑戦は、「もう一度出たい」と願っていた“東京喜劇”の舞台だ。AERA 2024年5月20日号より。 【写真】松下由樹さんをもっと見る * * * 「『ナースのお仕事』、見ていました」。20代のカメラマンがそう伝えると、松下由樹さんはふわっと笑った。「再放送かな? ありがたいですね、世代を超えてずっと見てもらえるの」 1996年に始まった観月ありささんとの人気ドラマシリーズは、面倒見が良く温かで、茶目っ気もある“翔子先輩”として、松下さんのイメージに大きく影響しているだろう。 「『ナース』は、いま見ても面白い。新しいとか古いとかじゃない、ド定番の面白さがあると思うんです。カメラのフレームをはみ出て演じて、また画面に戻ってくるとか、そういう、映像だから生まれる面白さもあったし、何よりやっぱり、ありさちゃんとのコンビですよね。ちょっとした間合いとか、OKがかかるまでずっとやりつづけるとか(笑)、2人だから生まれてくるものがたくさんあった。面白くするには、『受け』も、双方が大事っていうのはあのドラマで学びましたね」 「ナース」以前は恋愛トレンディードラマの常連で、コメディーの印象はなかった松下さん。 「心の底から声を出して涙流すぐらい笑うって、すごく解放されるじゃないですか。体の血の巡りもよくなるし、気持ちもフレンドリーになるし。だから、笑いって難しいけど、自分も役者として演じることで人を笑顔にすることができたらいいな、挑戦したいなって思ったんです」
その挑戦が、のちのバラエティー番組「ココリコミラクルタイプ」のドラマ風コント出演につながり、役柄の幅はさらに広がっていった。90年代からコンスタントにさまざまな役を演じつづける女優は、他に例を見ない。〈彩(「29歳のクリスマス」)の生き方に憧れた〉〈春日局(「大奥」)の迫力!〉〈寅三さん(「警視庁ゼロ係 ~生活安全課なんでも相談室~」)が好き〉と、松下さんに寄せられるコメントは実にバリエーションが豊かだ。 「役名で呼ばれるの、うれしいですよね。寅三さんもね、本当に長くやっているので、ようやく浸透したなって。幅広くやらせてもらっているのは、すごくありがたいことだって受け止めています。役者として求められること、テレビドラマにキャスティングされることって、時代時代に合ったものが必要とされると思うので、そういう意味では、時代に合う役者でいたいなっていうふうには思いますし、いろんな役って、やりたくてもなかなかできないことも多いと思うし。ある種、いつも挑戦ですね」と笑顔になる松下さんは、今年1-3月期も「おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!」「恋する警護24時」の2本の連続ドラマと、「義母と娘のブルースFINAL」に出演。6月2日からは、三宅裕司さん率いる熱海五郎一座「スマイル フォーエバー ~ちょいワル淑女と愛の魔法~」に出演する。いつかもう一度出たいと願っていたという“東京喜劇=軽演劇”の舞台だ。