東山温泉の人々の厚意に感謝 東京・根岸小の集団疎開から80年 思い出の盆踊りが縁つなぐ 福島県会津若松市
東山温泉の人々の厚意に、感謝の思いを伝えたい―。東京都台東区の根岸小の小西祐一校長らが4日、太平洋戦争末期に同校児童が集団疎開した福島県会津若松市東山温泉を訪れた。児童を受け入れた旅館に感謝状を贈り、夜には、当時の児童を励まそうと始まった東山盆踊りに参加した。集団学童疎開と盆踊りから80年の節目の夏。歴史的な縁と平和の尊さを次代につなぐ新たな交流の芽が生まれた。 根岸小は1944(昭和19)年8月、3年生以上の児童が会津地方に集団疎開し、女子は東山温泉に身を寄せた。「子どもたちは、この夏景色を見て、どんな思いだっただろう」。小西校長が感慨深げに言葉を紡いだ。訪れたのは「くつろぎ宿 新滝」。「当時は大変お世話になりました」。旅館関係者に感謝状を手渡した。一緒に訪れた同校の広野花梨さん(6年)・蓮さん(2年)きょうだい、渡辺真人前PTA会長らが疎開時の写真などを収めた同校創立150年記念誌、花束などを贈った。
5年前、疎開した女性に当時の話を聞いたという小西校長は「泣き部屋」が強く印象に残ったと語る。先の見えない疎開生活で、子どもたちは夜に悲しくなると小さな部屋に入って泣いたという。花梨さんは「親元を離れた暮らしを思うと、とてもかわいそう」と思いをはせた。小西校長は「子どもたちに、そんな思いを2度とさせてはいけない」と言葉に力を込めた。 4日に最終日を迎えた東山盆踊り。小西校長はやぐらに立ち、「当時の児童にとって東山温泉の人々の温かさが心の支えになった。これからも会津若松市と台東区の絆が深まることを願う」とし、80年前の恩に感謝した。室井照平市長は「市民と一緒に縁を大事にしていく。子どもの交流があってもいいと思う」と述べた。盆踊り実行委員長の平賀茂美東山温泉観光協会長も交流進展に期待を寄せた。花梨さんが東京音頭の太鼓演奏を披露した。 小西校長によると、疎開児童の中で高齢になってから東山温泉を訪れた人は少なくないという。「つらい中でも、楽しい思い出もあったに違いない。一生懸命生きた証がここにある、そんな思いがあったのだと思う」。同校は今後、疎開時の状況などを語り継ぎ、平和の尊さや会津への思いを共有していく。