子供のヒーローから大人も楽しめるSF物語へ ガンダムがつくった巨大ロボットの現在地 ロボット大好き
7月6日から京都文化博物館で開催される展覧会『日本の巨大ロボット群像-鉄人28号、ガンダム、ロボットアニメの浪漫-』(産経新聞社など主催)の目玉のひとつが、厚さ2センチにも及ぶ「図録」である。手に取ってページをめくるとそのすごさが伝わってくる。これはもう「図鑑」いや「ロボット辞典」である。監修は〝超マニアック〟な3人目、五十嵐浩司氏(55)。「私の引き出しをあけたら、こうなりました」と豪語するこの男のロボット人生をのぞいてみよう。 普通、展覧会の「図録」といえば、展示された作品の写真と解説が一般的。ところがこの『日本の巨大ロボット群像』展の図録は、展示されていない貴重な図案が「これでもか!」といわんばかりに掲載されている。 例えば「ゲッターロボ」や「勇者ライディーン」「超時空要塞マクロス」などの完成イラストだけでなく、合体や変身するときのデッサンや下絵まで載っている。それを見るだけで、アニメーターたちのロボットにかける熱い情熱が伝わってくるのだ。 「私としては特別なことをしたつもりはありません。図録はこれまで私が蓄積した、知識や資料の一部をご覧いただいたものと思っていただければ幸いです」 いったい、五十嵐氏の「ロボット人生」とはどんなものだったのだろう。 「昭和43年生まれですからね、3~4歳のころには『仮面ライダー』や『帰ってきたウルトラマン』がそばにいたし、幼稚園の年長さんのときに『マジンガーZ』が登場。ロボットのテレビを見ているかおもちゃで遊んでいるか―でした。私だけじゃなく、当時の子供たちはみんなそんな環境でした」 では、何がほかの子供と違ったのだろう。 「みんなと同じようにロボットから卒業できなかったんです。みんな10歳になるまでに『ロボットで遊ぶなんて恥ずかしい』と卒業していく。ところが、私は10歳のころにガンダムに出会ってしまったんです」 昭和54年に登場した「機動戦士ガンダム」はそれまでのロボットアニメの常識を覆した。これまでのロボットアニメは勧善懲悪のヒーローもの。ところがガンダムは、架空の未来世界における人間同士の「戦争」を設定し、リアルな人間ドラマの中で登場する巨大ロボットは通常兵器として描かれていた。 「衝撃でした。ロボットアニメのパターンを完全に崩したわけですから。やがてガンダムの影響でロボットアニメの対象年齢が引き上げられて、卒業のタイミングを逸してしまいました」