水陸両用車で上陸、落下傘で降下…自衛隊×在日米軍 「日本版『海兵隊』のド迫力!演習現場」壮絶写真
うなりを上げ、波を切りながら進む5両の水陸両用車AAV7。 沖合で一旦停止し、縦に1列に並ぶと、そのまま浜辺を目掛けて一気に突き進んだ。さらにスピードを上げ、車体を覆い隠さんばかりに大きな波しぶきを上げながら砂浜に上陸すると、そのまま奥まで進んで急停止。即座に後部ハッチが開き、中から小銃を抱えた自衛官たちがいきおいよく飛び出した。 【画像】一般道を走る戦闘車、輸送機から降下する隊員…自衛隊×在日米軍 「巨大演習」緊迫の現場写真 11月19日午前10時頃、陸上自衛隊に編成されている日本版海兵隊こと水陸機動団は、南西諸島に属する徳之島(鹿児島県)の花徳(けどく)浜への上陸に成功した――。 これは11月10日から20日にかけて行われた自衛隊による「令和5年度自衛隊統合演習」の一シーンである。 訓練名にある「統合」とは、陸海空自衛隊を一つの部隊として運用することを指す。今回、同訓練には在日米軍も参加。さらに韓国軍やフィリピン軍、そしてNATOなどから研修者を招聘した。 参加した自衛官は約3万人で、在日米軍からの参加部隊をあわせると人員は4万人以上。このほか、車両が約3500両、艦艇が約20隻、航空機約210機が参加するという今年度最大規模の訓練となった。 ここ数年、自衛隊が行う訓練は、中国による台湾侵攻を受けての日本南西諸島部における島嶼(とうしょ)(島々)防衛作戦が想定されている。ひとたび台湾有事が現実化すれば、危機に直面するのは″戦場″に近い沖縄や九州南部の島々だ。 米軍の拠点となる沖縄本島には無数のミサイルが飛来し、台湾東部に上陸する際に背後をさらす形になる南西諸島や沖縄の離島は中国軍に侵攻される可能性が高いと予測されている。
これまでも徳之島や奄美大島、沖縄県内の離島などで行われてきたが、今回の演習では「生地(せいち)」――有事の際、実際に自衛隊を展開することになる場所での訓練に力を入れた。通常、自衛隊の訓練は人里離れた「演習場」が使われるが、島嶼防衛訓練では海や砂浜、市街地といった、演習場にはない特殊な地形や気象がポイントになる。より″リアルな戦場″を求めて、徳之島全体を使った巨大訓練が初めて敢行されたのである。 開始に先立ち、九州を中心に日本中から多くの部隊が航空自衛隊の輸送機や民間フェリーを使って、続々と徳之島入り。島内の公園やグラウンド、民間の土地などに陣地を構築した。 景勝地の一つ恋慕岬には、10式戦車が配置され、洋上から上陸してくる敵軍に向けて砲口を定めた。 そしてその前の道路を、16式機動戦闘車が走り抜けていく。 手々浜海浜公園や徳之島町総合運動公園にはV-22オスプレイなど陸上自衛隊の航空部隊が着陸。筆者がレンタカーで海岸線を走っていると、海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」と「しもきた」が視界に入ってきた。 今回の訓練でとくに大きなウエイトを占めたのが、空自の「機動分散運用」訓練だ。空自の基地が使えなくなった場合を想定し、民間空港において補給を受けるという訓練で、徳之島空港や奄美空港を使ってF-15戦闘機やE-2C早期警戒機がタッチ・アンド・ゴー(着陸直後に離陸する訓練)や燃料補給を行った。 今回、想定された「空自の基地が使えなくなった場面」は、先述のように敵のミサイルや爆撃機等による航空攻撃、または武装工作員による爆破テロなどによって、「那覇基地の滑走路が破壊された」というケースだったようで、11月15日には那覇基地で陸自と空自の施設部隊による滑走路の修復が行われた。 九州から日本最西端にある与那国島までの間で、戦闘機の離発着が行える空自の基地は那覇基地しかない。 那覇基地が先制攻撃を受けた場合、自衛隊は徳之島や奄美の民間空港を活用することになるのだ。