相場格言では「騒がしい酉年」 日銀も騒ぐのか?
相場に格言に従うと酉年の2017年は騒がしい年になると予想されます。実際、トランプ政権の行方、連邦準備制度理事会(FRB)による断続的な利上げ、中国経済の動向など、金融市場を騒がしくさせる要因は数多くあります。 そうした前提の下、筆者を含む多くの市場関係者が金融市場の大幅な変動を予想していますが、筆者はそうした騒がしい金融市場をよそに日銀が金融政策の現状維持を貫くと予想しています。その理由を一言で表現するならば、本邦金融市場がすでに十分に緩和的だからです。(解説:第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)
ここ数年の「名目GDP>長期金利」状態はバブル期と同じ
一般に長期金利は実質金利+予想インフレ率の合計とされ、それはつまるところ長期金利が名目国内総生産(GDP)成長率に近い値となることを意味します(ここではリスクプレミアムは無視)。従って、理論上の長期金利は名目GDP成長率をわずかに上回る水準に落ち着くことになります(ここでは差分をリスクプレミアとする)。名目GDPとは、実質成長率にインフレ率を足したものと換言できるので、おカネの賃料である金利がそれに近くなるのは当然と言えるでしょう。要するに実質金利と実質成長率、(実際の)インフレ率と予想インフレ率は非常に似かよった概念であるということです。実際、日本の名目GDP成長率と10年金利は概ねそうした関係が成立してきました。 例外はここ数年とバブル期です。1980年代後半は複合的要因による金利低下を背景に長期金利が複数年にわたって名目GDP成長率を下回っていたため、それが不動産開発を中心とする過剰投資につながり、バブルの一因となったとされています。当時の日本経済は名目GDPが8%で成長するなか、長期金利が5%程度で推移していましたから、極端な話、投資家・事業家は5%で調達したおカネを8%の収益案件に投資することが可能でした。 こうした “おいしい”状況は過剰投資につながります。「名目GDP>長期金利」という関係は政府部門における税収の伸びが利払い費の増加分を上回るという関係でもありますから、財政の健全化を議論する上では前向きなものですが、あまりに長期間その状態にあると過度なリスクテイクを誘発することが指摘されています。実際、2000年代半ばの欧米の住宅バブル期においてもこの関係は成立していたので、やはりバブルの一因になるとの指摘は説得力があるでしょう。