清水尋也、大西礼芳、藤原季節が示す“現在地” インディシーンをも支える演技者たち
藤原季節が2024年に刻んだ“チームを大切にする”姿勢
●藤原季節 そして、メジャーシーンとインディシーンを往来しながら各作品の顔となり、自身の表現活動も展開する俳優には藤原季節がいる。各方面から厚い支持を集める彼は、主演を務めた映画『あるいは、ユートピア』が公開中だ。謎の巨大生物の襲来により、とあるホテルから出られなくなった12人の者たちの交流を描いた大胆かつ緻密に練り上げられた会話劇である。これまた気鋭の映画作家・金允洙監督の長編デビュー作で、画面構成や音響設計など、細部に至るまで才気に溢れた一作になっている。 しかも出演者の全員が手練れの演技者。藤原は主演俳優として、ときに座組を率い、またあるときには誰かに引っ張られ、巧みなポジション転換を繰り返しながらチーム全体の力で私たちを魅了する。彼がチームというものを大切にする俳優であることを私たちはこの2024年、強く再認識することになっただろう。藤原が大きく世にでるきっかけとなった『ケンとカズ』(2016年)の小路紘史監督が長い時間をかけて手がけた新作『辰巳』では短い出番ながら重要な役どころを担い、この8年における俳優としての大きな成長をスクリーンに刻んだ。さらには友人や先輩らと自主制作で生み出した幻の主演作『東京ランドマーク』も長い時を経て本格的にスクリーンに。いまでも全国各地で上映が続き、藤原自身も宣伝活動に積極的に参加している。 そんな大きなチームを大切にするいっぽうで、彼はミニマルなチームでの活動も展開している。「朗読×音楽」をモチーフに、藤原とプロデューサーの八十嶋淳が共同で企画・構成を手がける「季節と朗読」というプロジェクトだ。その最新作である「『景秋』季節と朗読 byライブナタリー」が上演を終えたばかりのところ。これまでに私は配信を含めて2度、この「季節と朗読」の世界を堪能してきた。いずれもタッグを組んだミュージシャンは羊文学の塩塚モエカで、今回はodolのミゾベリョウ(Vocal / Guitar)と森山公稀(Piano / Synthesizer)だった。藤原が読み上げたのは太宰治の『斜陽』で、彼は台本を持たず、その声と肉体とでこの物語世界を体現してみせる。凄まじい胆力の持ち主である。「朗読」の概念を拡張させる試みに胸を打たれ、「芝居」に魅せられてやまない彼のかぎりなく素顔に近いものを、私たち観客は目撃することになる。今後も続いてほしい企画である。 ここに名前を並べた3名の俳優たちの動向から、何を読み取ることができるだろうか。彼ら彼女らの作品の選び方、関わり方から見えてくるものがある。大切なのは作品の中身や演技表現だけではなかったりもするのだ。
折田侑駿