お菓子の提供はOK、でも高級チョコはNG? 「グレーゾーン」が多い公職選挙法、難しい線引き
物議醸す「うちわのような厚紙」
他にも、選挙のたびに物議を醸すモノがある。街頭演説などで有権者に配られる、候補者の氏名などが書かれた円形状の厚紙だ。特に夏場は、演説を聴く人たちがそれをうちわのようにしてあおぐ姿を目にする。 公選法は選挙期間に関係なく、政治家らが選挙区内の有権者に金銭や物品などの「有価物」を寄付する行為を禁じており、栃木県足利市選管などはホームページで候補者らがうちわを贈ることは禁止と明記する。2014年には当時の法相が名前入りの「うちわ」を選挙区内で配り、野党に「公選法違反の寄付行為に当たるのでは」と追及され、辞任した。 なぜうちわはNGで、丸いうちわのような厚紙はOKなのか。理由はこれが選挙運動用の「ビラ」だからだ。選挙によって枚数は異なるが、候補者個人のビラはA4判(長さ29・7センチ、幅21・0センチ)以内であれば厚みや形などは自由。選挙グッズを販売する店では「選挙で配ってもいい『うちわ』」などと紹介されることもある。選挙制度に詳しい大川千寿・神奈川大教授(政治過程論)は「うちわ風のビラは実務上認められるが、現実は目的が選挙運動のためだけとは言いがたい。『うちわ』との違いはあいまいだ」と指摘する。
ネットでの選挙運動、再注目される影響力
選挙期間中は、インターネットでの発信にも注意が必要だ。13年の法改正によって候補者や有権者などがXやフェイスブックなどのSNS(ネット交流サービス)で投票の呼びかけや政策動画の配信などをできるようになった。7月の東京都知事選では、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏が動画サイトなどを駆使した選挙戦で若年層や無党派層を中心に多くの支持を集め、ネットの影響力が再注目された。 ネットでの選挙運動ができる期間は、公示・告示日から投票前日まで。前日までの投稿を投票日にシェアすることも選挙運動とみなされる恐れがある。候補者や政党を除く有権者はメールの利用を禁じられており、転送も認められていない。18歳未満は選挙運動自体が禁止されている。 大川教授は「日本の公選法は『べからず集』とも言われるほど細かい規定が多い。公平公正な選挙のためにルールは重要だが、時代に合わせた柔軟な制度づくりも必要。そのためには政治への関心を高め、有権者に公選法への理解を深めてもらう努力が必要だ」と説明する。【古川幸奈】
※この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。