「前工程のしわ寄せは全て最終工程に引き継がれる」などトヨタ、ダイハツの不正はなぜ起こったのか?
2023年末に飛び込んできた、大手自動車メーカーダイハツの不正問題。2023年4月そして5月に発覚した認証試験での不正に加え、新たに174個もの不正行為が見つかったとの発表には、日本中が驚かされたことでしょう。なぜダイハツは不正に手を染めてしまったのでしょうか。 「ふざけるな!」クルマ好きおじさんはビッグモーターの社会からの退場を切に願う
■不正行為の背景には同情する面もある?
調査した第三者委員会の報告書には、新型車の開発スケジュールが時代の流れにより、どんどん短縮されていく一方、現場はその変化に対応していくことができず、その齟齬(そご)が不正に繋がってしまった、という旨が記載されています。
「全て上手くいく前提のスケジュール」、「工程進捗の死守が要求される風土」、「前工程のしわ寄せは全て最終工程に引き継がれる」、「試験は一発勝負、不合格は許されない雰囲気」など、製造業に携わる人の多くが、「うちも同じだ……」と思ったことでしょう。 日程的に余裕がなく、上司に相談しても「どうやって解決するの?」と問われるだけ。やむにやまれず、実験結果の数値を入れ替えたり、やらないとならない確認試験を端折ってしまった現場エンジニアには、同情したくなる気持ちもあります。
■だが、罪は重い
あらゆる製造業において開発日程は絶対であり、そのゴールを動かすには、相応の理由が必要。クルマの場合、発売が1ヶ月延びることで、その間に法規が変わって再開発をすることになり、再び数十億の開発費がかかる、といったことも考えられます。 力業で日程に押し込むことは、サラリーマン時代の筆者も日々経験してきました。豊田章男会長も以前の会見で、「皆が守っていかなければならないモデルチェンジの時期(日程)が、現場においてプレッシャーになっていたことも充分考えられると思います」としていました。
ただ、ユーザーからみれば、スケジュール優先でつくられ、性能が中途半端な商品よりも、多少発表が遅れたとしても、しっかりと開発された商品がほしいと思う人が大半のはず。 開発日程のゴールを動かすことは多大な損失を生むことに繋がってしまう可能性があることなのですが、ユーザーの気持ちを考える余裕がなかったことは、エンジニア出身として、残念な気持ちでいっぱいです。特に、人の命にもつながりかねないクルマの認証試験での不正は、罪は重いといわざるをえません。