【大人旅なら今注目の富山へ】手土産におすすめ!センスと歴史が薫る老舗の銘菓
富山には、知る人ぞ知る銘菓が揃う。老舗の鉄板から小粋なプチ菓子まで、新幹線で帰路につく直前にJR富山駅で購入できる、センスが薫る手土産をお届けする 【写真】センスが薫る富山の手土産4選
《BUY》「月世界本舗」 どこか懐かしく、ハイカラなメレンゲ菓子
明治30年に創業した月世界本舗。その店名を冠した銘菓「月世界」は、一見すると飾り気のない端正な佇まいだが、仄かな黄色味は暁の空に浮かぶ淡い月影から想起。その風情から「月世界」と名付けられたというロマンティックな物語が秘められている。 その製法は、新鮮な鶏卵をベースに和三盆と白双糖を煮詰め、糖蜜と合わせて乾燥し、カットを施した。サクッとした歯ごたえがあるのに、口に運ぶと絡まった糸がほぐれるように、じんわり甘さがひろがる。日本茶はもちろん、紅茶や珈琲など洋の東西を問わずティータイムのパートナーとなる。 古典文学の月の物語を感じさせるようなパッケージも大人の手土産に好適だ。
「月世界」(4個包み入り)¥702(税込) 住所:富山県富山市上本町8-6 電話:076-421-2398
《BUY》「薄氷本舗 五郎丸屋」 真綿に包まれた、工芸品のごとき銘菓
茶の湯の世界で広く愛され、墨客の筆にも度々綴られるのが、宝暦2(1752)年創業で16代にわたり真摯な菓子づくりを受け継ぐ「薄氷本舗 五郎丸屋」である。 箱を開けると、まるで繊細な磁器を扱うかのように、ふかふかの真綿が敷き詰められた様子に意表をつかれる。真綿をひらり捲ると、四季の風情をシンプルに意匠化した極薄菓子があらわれる。 春には桜の花びらを模った「ひとひら」、初夏には「あやめ」や「蛍」、盛夏には「浴衣」、秋は「いちょう」、冬は「雪うさぎ」など。デザインの愛らしさもさることながら、薄焼きの菓子は口に含むとすうっと溶けるように消えて、和三盆のやわらかな風味がふわりと口の中に残る。 富山特産の餅米・新大正米を原料に薄くのばし、阿波産の和三盆を手間暇おしまずに代々伝わる手法によって、一枚ずつ丁寧に刷毛で塗るのだという。
花びら一片一片を模った春限定の「ひとひら」10枚入り¥1,404(税込) この銘菓が誕生したのは、5代目五郎丸屋八左衛門の頃に遡る。「北陸の深い雪がようやく溶けはじめる如月、弥生の早朝。田んぼの水面にうっすらと張った、今にも割れそうな氷の風情を最小限の造形美で表した」。そう教えてくれたのは、16代目当主渡邉克明さんだ。 そのフォルムについて、民藝運動の創始者であり日本の工芸の祖とされる柳宗悦は次のように語る。「私はよく友人から越中石動(いするぎ)の銘菓「薄氷」の贈物を受ける。和三盆による味わいもさることながら、私はその箱の蓋を開けることをいつも楽しむ。目が覚め、思いが鎮まるほどの美しい抽象紋が目前に現れるからである」(柳宗悦『抽象の美について』<日本民藝協会>より)。 加賀藩主前田公より幕府へも献上された繊細な味わいは、今なお多くの人々の口福を誘う。しっとり、ふわり、こっくり……言葉で形容し難い独特の食感は、珈琲やワインのお供としても楽しめる。
早春の氷を模したブルーのパッケージが目印 住所:富山県小矢部市中央町5-5 電話:0766-67-0039 TEXT BY TAKAKO KABASAWA 樺澤貴子(かばさわ・たかこ) クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークや、日本の手仕事を礎とした商品企画なども手掛ける。5年前にミラノの朝市で見つけた白シャツを今も愛用(写真)。旅先で美しいデザインや、美味しいモノを発見することに情熱を注ぐ。