5/24(金)公開!話題沸騰の映画『関心領域』無関心がもたらす人間性の喪失とは
発見、感動、思索……知的好奇心を刺激する、映画好きな大人のための今月の新作を厳選! 【画像】『関心領域』一家の幸せが、収容所の残酷さをいっそう浮彫りにする
無関心がもたらす人間性の喪失とは──普遍的な問題提起で話題沸騰の『関心領域』
本年度のアカデミー賞に作品賞など5部門にノミネートされ、国際長編映画賞とともに音響賞に輝いた話題作は、不穏な闇を捉えたオープニングから観客に「耳を澄ませ」と囁きかける。鳥の声が聴こえ、次の瞬間、長閑な川辺でピクニックする一家の姿が映し出され、やがて彼らは庭つきの大きな屋敷に帰ってゆく。軍服姿の夫と妻、そして躾の行き届いた子どもたちの “幸せな日常”が映し出されるが、何かがおかしい。時折響く銃声に叫び声、高い塀の向こうに聳え立つトンネル、立ち昇る黒い煙……。 ©Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
監督は、ジャミロクワイの「ヴァーチァル・インサニティ」やレディオヘッドの「ストリート・スピリット」等の名作PVを手掛けた映像作家から映画監督へと転身し、新感覚SFホラー『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』でその独特の世界観を印象づけたジョナサン・グレイザー。映画タイトルの“関心領域”とは、第二次世界大戦中、ナチス親衛隊がアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルを表現するのに使った言葉。 “幸せな日常”を送っているのは、実在のアウシュビッツ収容所長ルドルフ・ヘスとその家族だ。 鬼才グレイザーは、収容所内の所業を一切見せることなく、壁一枚で隔てられた一家が見たいものだけを見、聞きたいものだけを聞く日々を淡々と映し出し続ける。しかし不穏な音響に晒される観客は、“幸せな暮らし”を目つめながら、壁の向こうを感じて慄き、ヘスの妻(『落下の解剖学』で本年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたザンドラ・ヒュラーが演じる)が、「ここは子育てするのに理想の環境」と引っ越しを拒む姿にギョッとする。この関心領域における極度の無関心を通して、「人間性の喪失とは」と迫る衝撃作は、恐ろしく、苦い余韻とともに、長引くウクライナやパレスチナの紛争の痛みに麻痺していく自分は彼らと同じなのではないか、という問いを突きつけてくる。 ©Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved. 『関心領域』 5月24日(金)より新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開