アクティビストが決算説明会で「舌戦」の異例事態 空港施設と大株主のJAL・ANAの関係を問う
東洋経済がANAに事実関係を問い合わせたところ、メールで回答を得た。プロキシーファイトに関する発言の有無については「子細までは覚えていない」とのこと。そのうえで次のように説明する。 「空港施設の企業価値向上に資する体制がどうあるべきかという観点から、次の時代を担う人材を尊重し、人心を一新すべきと考え、取締役選任議案に対する当社の考え方を事前に説明したことは事実。会社提案内容が変わらなかったため、事前に説明した内容のとおり、議決権を行使した」
そもそもJALとANAからの天下り役員の存在はどう考えればいいのだろうか。焦点となるのが2社と空港施設との間における利益相反だ。 リムは「空港施設がここ数年来求めてきた冷暖房費などの条件改定に2社などが消極的だったとされている」と問題視する。対するJALとANAの見解は次のとおりとなる。 「空港施設との関係は、形式的には利益相反の構造に該当するかもしれないが、実質的には利益相反に該当する関係性にはない。空港施設の施設を賃借するにあたっても建設的な議論を重ねており、取引上も株主である立場を利用して強引に厳しい条件を押し付けるようなことはない」(JAL)
「空港施設との間には、羽田空港における施設利用や賃貸借等の取引があるが、公正な契約に基づき、経済合理性と安定継続性を追求した取引を行っている。株主という立場を利用した利益相反取引は生じていないと考えている」(ANA) ■天下り役員の存在に頼っている側面も 一方、悩ましい立場なのが空港施設だ。関係者は「利益相反の指摘は免れない」と語る反面、「プロパーだけでの経営は難しい」ともこぼす。JALとANAから役員クラスの天下りを受け入れることで「助かっている側面もある」と話す。
というのも空港施設の主要ポストはこれまで国交省の元官僚たちが占めてきた。成長戦略などの経営については国交省OBたちが決定し、それらを現場の社員が実行してきた。 だが、経営を支えてきた国交省OBらは昨年の人事介入問題を機に、ほぼ全員が退いた。そのためJALとANAから送られてくる役員クラスの人材が頼りになるというわけだ。 空港施設の株価は停滞が続いている。直近の株価は600円前後でPBR(株価純資産倍率)は0.5倍と、東証の求める1倍を大きく下回っている。リムは「空港施設の少数株主は辛酸をなめ続けてきた」と痛烈に批判する。
総会でリムの提案が可決される可能性はほぼない。とはいえ、一般株主らは空港施設の現経営陣にどのような評価を下すのか。
星出 遼平 :東洋経済 記者