<春に駆ける・健大高崎’23センバツ>/上 磨いた走塁生かせるか 関東大会で直面、見えた課題 /群馬
冬晴れの空の下、バットの快音が響いた。1月29日、高崎市の健大高崎野球部グラウンドでは、3チームに分かれて総当たりの紅白戦が行われていた。センバツ出場が決まってから初めての練習だ。「ミーティングでは甲子園をイメージして練習していこうと話し合った。良いスタートが切れている」と、主将の森田光希(2年)は話した。 2021年春以降、春夏秋の県大会で準優勝に甘んじていたチームは、昨秋の大会で久しぶりに頂点に立った。エース小玉湧斗(2年)の安定した投手力を武器に、守備から流れを呼び込むのが勝利のパターン。5試合で15盗塁と積極的な走塁で着実に得点を重ねた。 だが、甲子園常連の強豪がそろう関東大会は甘くはなかった。1回戦の青藍泰斗(栃木)戦は、初戦の緊張感からくる硬さのためか二回に失策が絡んで2点を失った。公式戦初スタメンだった堀江大和(2年)は「1打席目は緊張していて視界も狭く、投手しか見えていなかった」と振り返る。 直後の三回、2巡目の打順を迎えた半田真太郎(2年)、増渕晟聖(同)、堀江の3連続長短打で同点に追いつくと、チームは流れに乗りだした。「徐々に球場の雰囲気に慣れ、味方の応援を力に変えられた」という堀江は先頭で迎えた六回の3打席目、強振した3球目は右中間越えの三塁打に。後続の犠飛で4点目のホームを踏んだ。 2回戦は終盤の粘りが光り、横浜(神奈川)に5―2で勝利し4強入り。しかし、準決勝の山梨学院戦では打線がつながらず四回と九回の1得点ずつに終わった。積極的な走塁で相手を揺さぶる攻撃スタイルを持ち味とし、スローガンに「機動破壊」を掲げてきた。だが、「技術を磨いている走塁もランナーが出ないことには始まらない」(森田主将)という厳しい現実に直面した。その日の課題や反省点などを森田主将が記して部員と毎日共有している「野球ノート」には、打撃に関する記述が増えた。「スイングスピードを上げるため振り込みを(練習の)メインに」「センバツでは(球速が)140キロを超える投手がたくさんいる。それを打ち返すのを当たり前に」。チームは変わろうともがき始めていた。【西本龍太朗】 ◇ 健大高崎は3月18日に開幕する第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)への切符をつかんだ。チームの昨秋の戦いぶりをたどり、2年ぶり6回目のセンバツ出場を決めるまでの歩みを紹介する。