100円ラーメンで地元・八王子に恩返し めだかやドットコム・青木崇浩社長(48)
TOKYOまち・ひと物語 物価高もあってラーメン1杯1000円も当たり前の時代、東京・八王子の「100圓ラーメン」では、その名の通り100円でラーメンを楽しめる。店を運営する青木崇浩さん(48)は、メダカ販売事業を手掛ける「めだかやドットコム」の社長で、障害者就労支援にも携わる。かつて大病を患い、人生のどん底も経験した苦労人が多くの人とのつながり、『百縁』を結ぼうと、地元の名物メニューを蘇らせた。 ■メダカに魅せられ 小学5年のころ、理科の授業で触れたのが、メダカとの出合いだった。中学ではクラスで飼っていたメダカの世話をするうちに、「一匹だけ色が違うことに気付いて、そのメダカをかわいがった」。 家でもメダカを飼育し、ますます魅せられていった。「小ささや色合いがかわいらしくて、僕自身、メダカが嫌いという人に会ったことがない」と目を細める。 ■大病から逆襲 漠然と「ビッグになりたい」と夢を掲げていた青木さんは、世界で活躍する仕事にも興味があり、大学では経営学の道に進み、米国留学も1年間経験した。だが留学中に生じた頭部の違和感が、青木さんの人生を大きく狂わせていく。 帰国後、脳の難病であることが判明。病の進行は止まらず、手術に踏み切った。順風満帆に思えた人生が一瞬で崩れたことで鬱病も併発した。「周りは活躍していて、自分だけが取り残されている。その悔しさと苦しさは半端じゃなかった」 父、克彦さんの支援を受けて立ち直ると、青木さんはメダカで再起を図る。平成16年にメダカ総合情報サイト「めだかやドットコム」を開設し、メダカに関する情報発信を積極的に行ったほか、メダカの販売事業も手掛けるようになった。22年には突然変異などで生まれたさまざまな色や形をした「改良メダカ」の育成方法をまとめた専門書を出版。メダカの第一人者としての地位を確立していった。 そんなある日、近くの児童養護施設でメダカの授業をする機会があった。何度か足を運ぶうちに、障害を抱える子供たちに喜んでもらえるようになると、「何もできない自分を欲してくれる人がいる。自分が劇的に変われたと思うし、彼らのサポートをしていきたいと思った」。メダカ事業と並行して福祉の知識を一から学び、平成28年に障害者就労を支援する「株式会社あやめ会」を設立。八王子市内で多方面に事業を展開するようになった。 ■「八王子の名物」復活