記録的な転換社債ブーム、アジアを席巻-ヘッジファンド殺到
日本では大和ハウス工業が今年、2000億円相当の円建てCBを発行すると発表したが、同社も集めた資金を自社株買いに充てる計画だ。
UBSグループでアジア株式資本市場の共同責任者を務めるセリーナ・チャン氏(香港在勤)は、「これらの企業が行ったことは、基本的に資金調達と自社株買いのための非常に良い方法だ。同じ戦略で市場にアクセスする企業が増えてもおかしくない」と語った。
米アップルのスマートフォン「iPhone」を受託生産する台湾の鴻海精密工業は5月、CBの発行を開始した。最大7億ドルの調達計画はアジアの発行体として今年最大となるはずだったが、その数日後、アリババが45億ドル規模のCB発行条件を決定した。
中国の電子商取引大手、JDドットコムのCBは裁定取引に関心を持つヘッジファンドから強い需要を集めた。典型的な取引では、投資家はCBをロングにする一方で、その発行体の株式をショートとし、株価が下落すればショートから利益を確保し、株価が上昇すれば満期時にCBを株式に転換する。
シティグループのアジア太平洋地域担当エクイティー関連オリジネーション責任者ロブ・チャン氏は、「CBに投資するヘッジファンドはヘッジとして株式をショートする必要があり、企業はそれを利用して非常に効率的な自社株買いを実施することができる」と説明。CBの「マーケティング中の株価への影響も緩和される」とも指摘した。
JDドットコムやアリババとは異なるアプローチで、中国の大手パソコンメーカー、レノボはサウジアラビアの政府系ファンド向けに20億ドル相当のゼロクーポンCBを発行する。
モルガン・スタンレーのアジア太平洋地域グローバル資本市場共同責任者サウラブ・ディナカー氏(香港在勤)は、「歴史的にCBを発行する企業のほとんどは格付けを受けていない」が、「金利の高さを考えると、継続的な利払いコストを削減する方法としてCB市場の活用を考える投資適格企業が増えている」と述べた。