大きな「補正予算」と借金依存が下がる決算の落差の理由は?「もはやコロナ禍ではない」景気は下支えなしで無問題
緊急の必要性はないが、予算をつけてくれる時にもらっておいて、後で自由にお金を使えるようにする。しかも、予算計上して国から「基金」を設置した法人に支出しておけば、(国民や企業のために直ちに使っていなくても)補正予算の規模を大きく見せることができる。 これでは、景気対策としての即効性はない上に、国会の予算統制から逃れて自由にお金をばらまける。この「基金」の仕組みについて、これまでの状態が目に余るとして、岸田文雄前内閣は2023年12月にルールの厳格化を決めた。
■上振れ税収を補正予算で国民に還元 2024年度補正予算案では、宇宙戦略基金に3000億円計上するなど一部に残ってはいるが、2023年度補正予算のように基金増設のオンパレードということはない。むしろ、11月22日に決めた「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を実行するために、既存基金から残金を国庫返納させることとした。 こうした補正予算の財源はどう工面したのか。 2024年度の税収が上振れすると見込まれる3兆8270億円を補正予算に充てることとした。税収が上振れるほどに国民から税金をむしり取っているという見方もあるが、補正予算で国民に早速還元しているのである。
それに、「AI・半導体産業基盤強化フレーム」に関連して基金からの国庫返納を含む税外収入1兆8668億円を加えても、歳出予算を賄うのに6兆6900億円足りない。6兆6900億円は、国債の増発で賄うこととした。 これにより、2024年度補正後予算で、国債発行額は42兆1390億円となり、一般会計歳出総額126兆5150億円に対して33.3%を占めることとなった。歳出総額に占める国債発行額の比率である公債依存度は、3分の1を何とかして超えまいと財務官僚が踏ん張ったかのような水準である。
国債を増発してまで巨額の補正予算を組むということが、必要なのか。 補正予算が閣議決定された同じ日、加藤財務相に手交した財政制度等審議会の意見書「令和7年度予算の編成等に関する建議」は、「もはやコロナ禍ではない」という書き出しで始まっている。 予算規模はコロナ禍で膨張したものの、コロナ対策は財政的にもはや必要なくなったにもかかわらず、依然拡大したままであり「速やかに平時化させる必要がある」として、コロナ前の水準に戻すよう求めた。