かつてのマンガ少女なら、必見の原画展。大和和紀×山岸凉子、巨匠ふたりの名作に会いに、いざ札幌。
――大和先生にお聞きします。今ちょうどNHKの大河ドラマで「源氏物語」がテーマになっていて、ちょっとした源氏ブームになっています。ドラマを見ておられるかということも含めて、この現象をどう思われますか? 大和 大河ドラマは源氏でなく紫式部の話ですが。「源氏物語」って不思議と、何年か周期でブームになるのね。それがあるから1000年も生き続けてきたんだと思うんです。今回のNHKの大河も見ております。突っ込みどころはいろいろありますが(笑)、ちょっと韓流ノリもあって、楽しめるものにはなっていると思う。藤原3兄弟の確執の話だから光源氏は出てきませんが…。でも、例えば外国人でも日本人でもそうなんだけれども、日本に王朝時代があったことをあまり知らない人も多い。侍の時代からしか知らない人が多いから、そういう風俗、文化を知ってもらうのはいいのかなと思います。 ――山岸先生にお聞きします。2020年には宝塚歌劇で大和先生の『はいからさんが通る』が再演され、去年はモンキー・パンチ先生の『ルパン三世』が歌舞伎になりました。そのように近年、名作マンガのメディアミックスで質の高い舞台が実現されるようになってきています。『日出処の天子』についてはいかがでしょう。歌舞伎化されるなどの計画はありますか? 山岸 実は昔、松竹さんから具体的な俳優さんの名前を挙げてお話があったんですよ。でも私ったら(坂東)玉三郎さんの熱烈なファンなもので、玉さまでなければ…とお断りしてしまったんです。後から歌舞伎ファンの友人たちに、なんてもったいない!とものすごく怒られてしまいました。そのまま今この年になってしまって。 ――今なら、玉三郎さんの愛弟子の中村七之助さんなどもおられます。 山岸 七之助さん、素敵ですよね。そうすると兄弟で、勘九郎さんで毛人ができますね。 ――山岸先生は大和先生の作品をほとんど読んだことがなかったそうですが、それはなぜでしょうか。 山岸 単に講談社から本が送られてこなかったからです(笑)。マンガ家はお金を出してマンガを買わないので…。当時は講談社さんとお付き合いがなくて。実は私の担当編集が大和さんのファンで、私が締め切りで私が死にそうになっているときに「今回の大和さんの作品はこんなふうに面白かった」とか横で言ってくるんですよ。私は「何だそれは…」と思いながら苦しんで描いておりました。 大和 私も送られてくる集英社や小学館の本に載っているものは読んでいます。でも全部を読み通した作品ってあまりなくて。『日出処の天子』も対談することになって初めて全巻買って最後まで読みました。ああこういう結末だったのね、って。それが3、4年前ですね。山岸さんは多分いろんなものを見て影響を受けたくないというところがあるのではないでしょうか。 ――トークショーを終えて、いまどのようなお気持ちですか? 大和 これが1回しかないというところが貴重なんじゃないでしょうか。この後もまたあると皆に飽きられると思います(笑)。でも幸せでした。この組み合わせでできたことがすごくて、私はそれだけで満足です。あまりお互いに作品を語り合うということはないんですけど、イベントなので仕方なく(笑)。普段話すときは本当に普通の話しかしないので。病気の話とかね」 山岸 今日は舞台の上だったので、お互いの作品をこんなふうに思っているんだ、こんなところに苦労しているんだというのが分かって、それがとても面白かったですね」
文・クロワッサン オンライン編集部 ※会場内では許可を取って撮影しています。
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