<北陸記者リポート>センバツ・氷見 学校内外強力サポート /富山
氷見には、学校内外で野球部を強力にサポートする人々がいる。例えば、学外コーチ。3人のうち2人は同高野球部OBだが、もう1人は同高とは縁のないプロ出身コーチ、元阪神捕手の山川猛さん(68)だ。高校野球ではプロ野球や元プロ関係者との交流が原則禁止されているため、山川さんは指導資格研修を受けて資格を取得。日本高野連、富山県高野連双方の許可を得て昨年9月にコーチに就任した。【青山郁子】 ◇元プロコーチ 山川さんは兵庫県姫路市出身。東洋大姫路3年で夏の甲子園に出場した。その後大学、社会人を経て1979年から西武や阪神でプレーし、阪神ではコーチの経験もある。2020年、富山県氷見市出身で、氷見高バレー部のOGでもある妻の親の介護のため、夫婦で移住した。 山川さんが氷見に移住したと知った氷見高野球部関係者が「力を貸してほしい」と頼み込み、「自分で役に立つなら」と快諾。ちょうどチームは昨夏の富山大会決勝で惜敗し、リベンジに燃えていた時期でもあった。 初めて練習を見た時は「地方特有のおとなしい部員が多く、他の学校だったら何人試合に出られるかな」と感じた。しかし、選手のひたむきさを見るにつけ、共に夢を追う気持ちが高まり、毎日の練習ではこれまで培った技と心を惜しみなく教えている。 何度も繰り返すのは「基本の反復」。キャッチボール、打席の1球目、全力疾走など基本をいかに大切にできるか。「基本がしっかりできる選手は長続きする」というプロ時代に得た教訓でもある。 また、捕手出身であることから、バッテリーへの指導にも力を入れる。主戦の青野拓海投手には、常に冷静さを保つため「もう一人の自分を背負って、相談しながら投げてみて」とアドバイス。青野投手は、山川さんのアドバイスをぐんぐんと吸収している。 甲子園は自分自身も高校時代から慣れ親しんだ球場。「よそ行きの野球ではなく氷見らしい試合を。今までやってきた基本プレーを甲子園でできれば、おのずと結果はついてくる」と期待する。 ◇うどん差し入れ 一方、野球部を外から支えているのが、同市内で製麺業と飲食店を営む金谷和義さん(51)だ。2年前から同市の名物「氷見うどん」を差し入れ、選手の元気の源となっている。氷見うどんは手延べ作業のため、切れ端や麺の太さにばらつきが出る。金谷さんはその商品にならないうどんを、不定期なながら、キロ単位でまとめて差し入れを続ける。 自身は同高OBでも野球経験者でもないが、昨年夏までおいが同高野球部に所属していたため、定休日には応援に出掛けるようになり、「おいしくて消化にいいうどんを食べて元気を出して」と差し入れも始めた。煮干しを使ったカレー「氷見カレー」学会の会長も務め、今月5日には甲子園出場祝いにと、加盟店とともにカレーやハンバーグなども振る舞った。甲子園の試合当日には店を休業して応援に駆けつける予定で、「運を味方につけて伸び伸びと試合を楽しんで来て」とエールを送る。 ◇応援する会 今月10日には同窓会、PTA、野球部OBら約30人で「甲子園出場を応援する会」(嶋田茂会長)を設立。物心両面でサポートすることになった。また、氷見市では、市民からの応援メッセージを募集する特設サイト(https://www.city.himi.toyama.jp/gyosei/soshiki/sports/2/8578.html)も開設し、ナインの最新情報も発信中だ。