<高校野球>大会直前に4カ所を骨折「涙が止まらず」 エースで主将、縁の下で支えた最後の夏 「全力で戦った仲間に感謝」白岡・納見主将
12日にレジスタ大宮で行われた夏の全国高校野球選手権埼玉大会1回戦の白岡―浦和実。躍進を狙う白岡のマウンドにエースで3年の納見柊羽投手(17)の姿はなかった。大会直前のけがのため、ベンチからチームメートを鼓舞した。0―7で敗れはしたが、最後まで主将としての役割を全うした。「できることをやりきった。高校野球に悔いはない」と胸を張った。 ▼<高校野球>埼玉地区大会 3回戦以降の組み合わせ 春季県大会で2回戦進出。チームは確かな手応えとともに夏を迎えるはずだった。大会まで2週間を切った6月30日の練習試合。0―5の試合終盤に打席に入った納見主将は、三塁強襲の打球で一塁にヘッドスライディング。とたんに左手に激痛が走った。 病院に向かうと左手の甲など4カ所の骨折を告げられた。「文字通り言葉が出ず、涙が止まらなかった」。最後の夏を心待ちにする仲間に伝える言葉がない。悔しさで部活にも足が向かない。気持ちを押し殺して7月3日の練習に顔を出すと、ひたむきに打ち込む仲間の姿があった。 「この夏は納見のために」。チームの合言葉が決まった。仲間からの信頼は厚い。新チーム結成当初から主将を任された。「ほかの選択肢はなかった。努力家でチームを引っ張れる。みんなで一致した」と金子章太郎監督(29)。言動でチームを引っ張る理想の主将像だった。 チーム練習が終わると、誰よりも長く自主練習に打ち込んだ。「自分が率先しないとついてこない。緩い野球は嫌だった」。毎日のように夜遅くまで練習した。揺るぎないのは高校野球への思い。入学時に魅了された「熱い野球」。一つのプレー、一球ごとに厳しく戦う白岡の野球が好きだった。 今大会、自身が上がるはずだったマウンドは1年生の赤塚陽太投手に託された。六回1死一、二塁のピンチの場面で伝令として駆け寄った。かけた言葉は「俺だったらこの場面を抑えられる」。主将として日頃から人柄を見てきたからこそ出た言葉だった。赤塚投手は「負けず嫌いなので、その言葉でやってやると思えた」と闘争心に火が付いた。 集大成の夏、グラウンドに立てない悔しさがなかったはずはない。それでも「全力で戦う仲間の姿を見て、自分も一緒に戦っているような感覚になった。感謝を伝えたい」。縁の下からチームを支えた経験は今後の野球人生に生きるはずだ。
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