【大学駅伝】最後の箱根路/3度目の山上りで好走した国士大・山本雷我 高校時代の後輩・田中悠登との絆の投げキッス
投げキッスは走れなかった高校時代の後輩へのメッセージ
そして最後の箱根駅伝で区間7位の快走。タイムは1時間12分18秒、前回大会で自身が出した5区の国士大記録を51秒更新した。この走りを100点満点で自己採点してもらうと、山本は「90点です。区間5位、1時間11分30秒を目標にしていたので、それが達成できなかったぶん、10点マイナス。10kmぐらいのところで寒くて足がケイレンしそうになって、思った以上に攻めることができなかったんです」と、少し悔しそうな表情を見せた。それでも小川博之駅伝監督は「雷我は魂の走りを見せてくれた」と主将の力走を称えた。 芦ノ湖フィニッシュ時の「投げキッス」は、目立ちたいという気持ちからのパフォーマンスではなかった。そこには高校時代の後輩へのメッセージが込められていたのだ。 山本は福井・敦賀気比高3年時、全国高校駅伝に出場し、6区を走っている。その駅伝でチームメイトとして1区を走ったのが1学年後輩の田中悠登(現・青学大3年)、4区を走ったのが2学年後輩の斎藤将也(城西大2年)だった。田中も斎藤も下級生時からそれぞれチームの中心選手として脚光を浴びている。仲の良い後輩たちの活躍は、山本にとっても大きな刺激になっていた。 田中は昨秋の全日本大学駅伝では青学大のアンカーを務めており、今回の箱根駅伝でも8区にエントリーされていた。その田中がケガで苦しんでいるらしいという情報が入ってきた。山本自身もこの1年間、故障に泣かされてきただけに、田中の気持ちは痛いほどわかっている。 「悠登をなんとか元気づけてあげられないかと考えたんです。今は違うチームですけど、悠登とはいろんな思い出があるんで。全日本大学駅伝のとき悠登は青学のアンカーで、投げキッスのポーズをしてゴールしていたんです。今回の箱根駅伝で自分がいい走りをして、ゴールのあのポーズをやってみせれば、悠登もそれを見て、また頑張ろうって思ってくれるんじゃないかと」 お前には来年がある。来年は箱根の大舞台で、お前がこのパフォーマンスをやる番だ、と。「投げキッスゴール」は後輩への無言のメッセージだった。 レースを終えて、山本のスマートフォンには田中から「見てました!投げキッスありがとうございます!」とメッセージが届いたという。 大学4年間をもって、山本は競技人生に区切りをつけ、地元の福井に戻ると決めた。箱根駅伝の第100回大会が競技者として最後の大舞台となった。主将としてチームのために見せた4人抜きの力走。そしてフィニッシュ時のパフォーマンスで高校の後輩へ送ったメッセージ。強いインパクトを残して山本は箱根路に、そして陸上競技に別れを告げた。 山本雷我(やまもと・らいが:国士大)/2002年2月7日生まれ。福井県越前市出身。敦賀気比高卒。自己ベストは5000m14分29秒14、10000m29分33秒84、ハーフ1時間4分51秒。
小川誠志/月刊陸上競技