「殺し殺される現場」から「学びのプロセス」が起きている ウクライナ情勢
地政学・戦略学者の奥山真司が2月8日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナが新設する「無人兵器軍」について解説した。
ウクライナが「無人兵器軍」新設へ
ウクライナのゼレンスキー大統領は2月6日のビデオ演説で、無人機や無人艇に特化した「無人兵器軍」を新設する大統領令に署名したと発表した。侵略を続けるロシアとの戦闘で無人機を効果的に使うため、専門部隊の編成や訓練の効率化を図る。
ゲームチェンジャーとなる無人機
新行)先日、クリミア半島西部で、水上ドローンでロシアのミサイル艇を撃沈したという報道もありました。 奥山)2020年に「ナゴルノ・カラバフ紛争」がありましたが、その時点で既に無人兵器、ドローンが使われていました。今回の無人艇もそうですが、ドローンはまさに21世紀に入ってからのゲームチェンジャー、「この兵器があると戦い方が変わる」というものです。ウクライナは戦争開始の時点で自分たちの大きな船を自沈させたため、ほとんど海軍力を持っていません。その状態で無人兵器を使い、ロシア海軍の船などを沈めている。まさにゲームチェンジャーだと思います。
戦いの現場で学び合いが起きている
奥山)ウクライナが無人兵器軍をつくったのは当然の成り行きだと思います。我々はなかなか気付かないのですが、ロシアとウクライナは、戦争によってお互いに学び合っているのです。相手が何か劇的なことをやってきたら、それに対抗しなければなりません。「防ぐにはどうすればいいのか」と、現場で必死に学び合いが起きている。それを我々は認識しなければいけません。
殺し殺される現場から学びのプロセスが起きていることが、今回の戦争の特徴的な現象
奥山)当初、ロシアは部隊の使い方が上手くなかった。わざわざ前に出て行ってむざむざ無人機に見つかり、弾を撃たれてロシア兵が死ぬような状況もありました。犠牲が出ていたのは明らかにロシア側で、戦術面ではウクライナの方が上なのです。しかし、ロシアも流石にいろいろと組み替え、戦い方もここ数年で上手くなってきています。 新行)ロシアの戦い方も。 奥山)ロシアはウクライナに比べれば国力があるので、北朝鮮から約100万発の弾を調達し、防衛産業もフル稼働させています。西側からウクライナに供給される弾より、遥かに多くの弾をロシアの前線に送り届けるような体制を整えつつある。ウクライナは、戦術面では確かに凄いのですが、戦略面ではロシア側も学んで、徐々に有利になってきている状況があります。戦略を研究する人間からすると、お互いに殺し殺される状況から学びのプロセスが起きている。それが今回の戦争の特徴的な現象だと思います。