「出会った頃」と「現在」で表情が違う…2枚の写真でつづる保護猫と飼い主の〝ビフォーアフター物語〟
「一見したらお外で自由に気ままに暮らしているように見える猫たちは、実はすごく厳しい環境の中で生きています。実際に保護されたばかりの猫の中には、とても険しく、厳しい顔つきをしている子もいます。でも、お家の中で家族の愛情をいっぱいもらって過ごすようになると、1年とか2年で、すごく穏やかな顔つきに変わるんです」 【激変】えっ、こんなに変わるの⁉ 飼い主に出会ってからの猫たちの激変ぶり そう語るのは猫専門誌『猫びより』編集部の宮原万由子さんだ。 保護猫たちが現在の飼い主と出会い、それからどう変わっていったのか。そんな48の「ビフォーアフター」を収めた『みんなしあわせ! 保護猫ビフォーアフター』(猫びより編集部編・辰巳出版)が刊行されている。 同書は季刊誌である『猫びより』とムック本の『ネコまる』で取材した猫たちや、SNSで募集した飼い主からの投稿を収録したもの。保護団体から譲渡されてきた猫もいれば、草むらで鳴いていたところを犬がくわえて拾ってきた猫、大雨の中で溺れているところを助けた猫など、飼い主と出会うまでのドラマはさまざまだ。そんな「ビフォー」から、飼い主と月日を過ごした「アフター」の猫たちの変わりようには驚かされる。 近年「保護猫」という言葉をかなりよく耳にするようになったが、どんな猫が「保護」されるのか、なぜ「保護」しなければならないのか。宮原さんに保護猫の基本の「き」から聞いた。 一般的には保健所やボランティア、NPO法人などの団体が保護した猫を保護猫と言うそうだが、どういう猫が「保護」の対象となるのだろうか。 「避妊去勢手術を受けていない野良猫や、生まれて間もなく母猫とはぐれた子猫などが保護されるケースが多いです。あとは、多頭飼育崩壊のようなケースで、保健所とか、団体さんに保護される例もあります。保護猫が一律にどういう猫かというのは、なかなか難しいんですけど、飼われている猫ではなくて、何らかの理由で保護された猫というのが、一番近い言い方だと思います」 宮原さんによると、現在の日本では猫が自力でネズミや小動物をとって、それだけを食べて生き延びていると考えられる例は少なく、基本的には人間が餌をあげることで生きているという。つまり猫は人の社会の中で共生していくべき存在なのだ。 だが、ただ餌を与えているだけでは猫はどんどん増えていく一方で、それだけ不幸な猫も増えることとなる。保護団体やボランティアが避妊去勢手術をして「地域猫」として共生している例も多い。ただ、最近では猫も外ではなく家の中で飼うほうが幸せだという認識が深まっているのだという。 「猫にとって外の世界は決して生きやすい環境ではないです。酷暑や厳しい寒さなどもありますし、何より外にいると交通事故に遭う危険性も高いです。捕まえて虐待したりするようなひどい人もいます。 また他の猫と喧嘩してウイルスをもらうといったリスクもあるので、基本的には猫はみんな完全室内飼いで飼ってあげたいっていうのが、保護猫団体さんや、猫に関わる人たちの思いなのではないでしょうか。猫本人の意見は聞けないのでなんとも言えないんですけど、家の中で暮らし、定期的に動物病院にかかっていれば、確実に健康寿命は延びるはずです」 それでは実際に保護猫を飼うにはどうすればいいのだろうか。本には猫を見つけたときにどうするべきか、保護する場合の方法などにも一部触れているが、一般的な方法を教えてもらった。 「保護猫を迎えたいと思った時に、一番皆さんが取りやすい手段としては、 里親募集サイトから調べるのが一般的かなと思います。サイトで気になった猫がいればコンタクトを取ったり、あとは保護猫団体さんが主催している譲渡会に行く人も多いと思います。 譲渡会では実際に猫を見ることができるので、その子がどんな子なのかっていうのもわかりやすいですし、実際に保護猫を飼う上での注意点なども団体の方に聞くことができるのでいいと思います」 ただし、団体にもよるが、譲渡にあたって条件が厳しい場合も多い。飼育環境をチェックしたり、1人暮らしだと断られる場合もあるそうだ。保護された猫たちは過酷な環境で生きてきたり、中には人間に怖い目に遭わされた子もいる。だから猫を譲渡する団体の人たちも猫にアクシデントなく確実に幸せになってほしいという思いが強いのだ。それだけに飼うほうも気軽に飼うのではなく、それなりに覚悟が必要なのだろう。 宮原さんが取材した保護猫たちの中でもとくに印象に残っているのは、大きな茶白のオス猫「しょぼぼ」だという。 「しょぼぼは、Xで2万人弱のフォロワーがいる方の猫ちゃんで、バズってニュースになるなど有名だったんです。私がもともとファンで、『ネコまる』で取材したいってお声がけしたら『家に取材に来ても、しょぼぼは家族以外の人が苦手で絶対に隠れちゃうと思う』と、飼い主さんがおっしゃったので、写真をお借りしてメールでインタビューさせていただいて記事にしました。 しょぼぼは、飼い主さんのお家に来た時は、ずっと物陰に隠れていたそうです。でも今や、貫禄ある堂々とした猫になっていて、すごく可愛いんです。体がめちゃくちゃデカくて、立ち姿も『なんじゃこの猫は⁉』って思うくらいデカい。そして顔もすごく個性的なんですね。私はすっごく可愛いと思うんですけど、一般的にみんなが『カワイイ!』ってなるようなタイプの猫ちゃんではない。 でも、そんなしょぼぼを、飼い主さんがものすごく愛しているんですね。本にも書かれているんですけど《私たちにだけ精一杯懸命不器用に甘えてくれる姿には胸がいっぱいになります。しょぼぼ、これからも大きくて可愛くて、そしてどこかちょっとヘンテコな猫でいてください。しょぼぼの個性をこの世界の誰よりも愛してます》という飼い主さんの言葉に、保護猫を愛する人の気持ちが全部詰まってるんじゃないかと思います。私はこのインタビューを読むたびに泣いてしまうんです」 生後間もない頃から人と触れ合い、ある程度人馴れしているペットショップの猫とは違い、厳しい環境で生きてきた保護猫の中には数年飼っていても身体に触らせてくれなかったりするケースもあるという。だが、そんな猫だからこそ、自分たちを信頼してくれて甘えてくれる瞬間の喜びはひとしおなのだそうだ。 「保護猫の中には飼い主さんが思いもよらなかったような性格や個性が、年月をかけてだんだんあらわれてくる子もいて、そういうところもすごく魅力だと思います。 もちろん猫ちゃんによるんですけど、年月はかかっても愛した分だけ愛し返してくれると思うんですよ。愛する喜びと愛される喜びを教えてくれるのが、保護猫の魅力だと思います。そういうところをこの本を手に取ってくれた方には知ってほしいなと思いますね」 出会いから現在まで。保護猫と飼い主さんたちの48の物語をぜひご覧いただきたい。
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