新人王を獲得した異色のビーバップボクサー
実は、減量に失敗していた。 計量の1日前でリミットまで1.5キロオーバー。サウナに何度も入り、最後は、先輩の和気に付き合ってもらって、夜中の3時までストーブをたいてサウナ状態にしたジムでミット打ちを繰り返し、やっとのことでリミットまで落とした、その影響で、5ラウンド勝負の新人王で、終盤は、「足がつったんです。もし相手に足を使われていたらやばかったんですね」という。 若干18歳。中、高とビーパップハイスクールを地で行くようなヤンチャを貫き、高一で退学処分となった。「喧嘩なら誰にも負けない」と時を同じくしてボクシングの門を叩いた。父も大阪帝拳で学んだ元ボクサー。「どれだけのボクサーだったかは知らないけれど、ストリートファイトは相当なものだったらしい」。格闘家のDNAを受け継いでいて、今でも「ボクシングは喧嘩だと思っている」と荒っぽい。 退学処分となっていなければ、まだ高校3年生。「時々、思うんですよ。ボクシングをやっていなかったら、おれ今ごろ、どんな悪い道に進んでいたんだろうって。怖くもなるんです」。今でも小さいサングラスをつけて街を歩くと人が怖がって避けて歩くという。一歩、違えば間違った道へ進んだかもしれないビーバップボクサーはボクシングという天職見つけた。現在は、ガソリンスタンドでバイトをしながら大きな夢を抱く。「攻めて攻めて最後に倒す。そういうボクシングが理想。目標は、もちろん、世界チャンピオン。すぐにでもやりたい。これで日本ランキングにも入るだろうし、チャンスがあれば、次にでも日本タイトルを」と勇ましい。 デビュー1年で7戦無敗。協栄ジムトレーナー時代にWBA世界Sフライ級王者、鬼塚勝也を育てた古口哲会長も「気持ちが強い。将来、チャンピオンを狙える器」と太鼓判を押す。イケメン流行のプロアスリート界に、久しぶりに出てきた昔ながらの個性派ボクサー。まだディフェンスも甘く、スピード、パワー共にレベルアップが必要だが、ショートのコンビネーションとスイング系のパンチには目を見張るものがある。いかつい風貌とは裏腹に、いざ話をすれば、突っ張ってもおらず、素直で人懐こいから、なお好感が持てる。ビーバップハイスクールボクサーの次戦を見てみたくなった。 (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)