「脳」を使って判断力磨く 県立校の社、夏春連続出場の理由 センバツ出場校紹介
19年ぶり2回目の出場となる社(兵庫)が、昨夏の選手権大会初出場に続き、この春も19年ぶりのセンバツ切符を手にした。県立校が「夏春」連続で甲子園に立てるのは、「脳」を巧みに使った野球にある。
2枚看板の投手陣に安定感
野球部は選手39人とマネジャー4人の計43人。試合の後半で繰り出す集中打が持ち味だ。昨秋の兵庫県大会3位決定戦では、延長十三回に及ぶ接戦の末、強豪の育英を4―2で制した。近畿大会1回戦では、天理(奈良)から七回に一挙7点を奪って13―7で快勝し、ベスト8入りした。 投手陣は高橋大和(2年)と年綱皓(2年)の二枚看板。右投げの高橋は140キロを超える直球にカーブやチェンジアップなどを織り交ぜ、左投げの年綱は多彩な変化球を投げ分ける。守備も安定感があり、特に中堅の山本彪真(2年)は俊足を生かして広い守備範囲を誇る。 攻撃の柱は広角に打ち分ける河関楓太(2年)。打順は下位ながら秋の打率は4割3分5厘とチームトップだ。4番の水谷俊哉(2年)は全方向に長打を放ち、犠打などの小技も巧みでチームの勝利に貢献する。
判断力支える「脳トレ」
守備も攻撃も判断力がチームの要。昨秋の近畿大会1回戦の天理戦で、三回1死三塁から仕掛けたヒットエンドランが象徴的だった。「三塁走者は相手投手に気付かれないよう絶妙なスタートを切り、打者はわざと緩いゴロを打った」と山本監督。投ゴロが野選となった先制点で主導権を握り、終盤の大量得点で逃げ切った。 判断力向上の背景にあるのは、山本巧監督が選手に求める「思考、判断、行動」のプロセス。意味のないプレーが敗戦につながると考える。2020年秋の県大会3回戦で九回2死まで2点をリードしながら逆転負けを喫したことが原点だ。「抑えなきゃ、と漠然とプレーしていた。試合直後から、局面で考える力がつく練習方法に変えた」 その練習とは、脳(ブレーン)への働きかけ。一つが「ブレーンストーミング」だ。ポジション別のグループを作り、リーダーに山本監督が指示する。リーダーがメンバーに伝え、メンバーは反省点などを話し合う。発言を重ねることでプレーの浸透が強まるという。二つ目は「スーパーブレイントレーニング」と呼ぶ外部トレーナーによるメンタルトレーニングで、自分を信じる力などを養った。厳しい状況でも前向きな心構えを持ち続けられるようになり、劣勢からの逆転劇が増えた。
OBに阪神・近本光司ら
1913年に創立。普通科と生活科学科、体育科がある。敷地内にある寄宿舎「東雲寮」には、体育科の男子生徒90人が暮らす。 校訓は「誠実 協調 創造」で、生きがいのある生涯のために、生きる力と学ぶ力を身につける教育を目標としている。普通科には医療従事者を目指す生徒向けに、看護医療について学べるコースも設置されている。 野球部は49年創部。2004年のセンバツで春夏通じて初めて甲子園出場を果たし、快進撃を見せて4強入り。夏の甲子園は22年に初出場した。OBにはプロ野球・阪神の近本光司や楽天の辰己涼介らがいる。