「揺れたけど全然大丈夫だったよ」…増える外国人技能実習生、労働者の避難意識どう高める? 日向灘地震1カ月で見えた課題
日向灘を震源に鹿児島県内でも最大震度5強を観測した地震から、8日で1カ月が経過した。初の南海トラフ地震臨時情報が出されるなど防災意識が高まる中、技能実習生ら外国人労働者への対応が課題となっている。身の守り方や避難に対する意識が日本人より薄く、緊急時は連絡がつきにくい現状も見えてきた。監理団体などは対策に頭を悩ませる。 【写真】日向灘地震を受け実施された訓練に参加する技能実習生=6日、鹿児島市のれいめい事業協同組合
震源地に近かった志布志市や大崎町では、家屋倒壊や崖崩れなどの被害が出た。約400人の実習生を受け入れる監理団体「エーアンドエフ事業協同組合」(同市)の江田敦郎代表は、実習生や寮などに被害がなく胸をなで下ろした。 ただ「海や川に近い寮や職場もある。もし津波が来たら安全に避難できるだろうか」と懸念も芽生えた。受け入れ先企業や行政と連携し定期的な防災訓練などの必要性を痛感している。 日向灘地震では、鹿児島市でも震度5弱を観測した。「揺れたけど、全然大丈夫だったよ」と片言の日本語で笑うのは、県内で働く技能実習生のミャンマー人男性。揺れた当時を振り返ってもらったものの、危機感は感じられなかった。 人口減で働き手が不足する中、県内の農家や企業にとって外国人材は欠かせない存在になっている。鹿児島労働局のデータでは、県内の外国人労働者は1万2015人(2023年10月現在)。うち8割超が地震が比較的少なく、日本と比べ防災教育が充実していない東南アジアの出身だ。
■□■ 監理団体「れいめい事業協同組合」(鹿児島市)は東南アジアを中心に約400人の実習生を受け入れる。福崎泰史理事長は「実習生にとって津波や火災などの二次災害を想像することは難しい。それどころか揺れさえ収まれば安全だとの認識がある」と話す。 実習生には入国後、ビデオでの防災講習が義務付けられているが、実践できるのか不安がよぎった。地震後に改めて講習を行い「揺れた時は机などに身を隠し頭を守る」「避難所は無料で使える」など、基本的な防災知識から教えている。 避難情報の迅速な発信など、災害時のスマートフォン活用は浸透しつつある。総務省によると、在留外国人の約9割がスマホ所有者。ただ福崎理事長によると、実習生の大半は経済面などから日本での電話回線を持たない。停電などでWi-Fiが使えない場合、「生存確認などがスムーズにできるのか」と危惧する。 ■□■ 「外国人も含めた地域ぐるみでの備えが、命を救う上で重要」と強調するのは、県国際交流協会の藤井一彦総務企画課長。同協会は21年度から在留外国人向けの防災講座を開く。住民と一緒にハザードマップを確認したり、実際に避難所まで歩いたりする。
藤井課長は「日ごろから地域住民と顔を合わせることが防災の第一歩。外国人がお年寄りら弱者を救う立場になることもある」。外国人も一住民として、地域社会へ参加することが防災力を高める鍵になると確信している。
南日本新聞 | 鹿児島