浅野拓磨に期待する“商業的価値以上の価値”…マジョルカの狙いと起用法を番記者が分析
マジョルカと2年契約
日本代表FW浅野拓磨の新天地は、マジョルカに決定。2年契約を締結し、新シーズンから初のラ・リーガ挑戦がスタートする。 浅野拓磨の市場価値はいくら?日本代表の最新市場価値ランキングTOP20 これまで大久保嘉人氏、家長昭博(川崎フロンターレ)、そして久保建英(レアル・ソシエダ)がトップチームでプレーしてきたマジョルカ。ピッチ外でも日本企業と提携するなど日本と縁深い彼らだが、このスピードスターと契約した狙いはどこにあるのだろうか? マジョルカ出身であり、地方紙で番記者を務めるセバスティア・アドロベル氏が分析する。 文=セバスティア・アドロベル(Sebastia Adrover)/マジョルカ地方紙『ディアリオ・デ・マジョルカ』 翻訳=江間慎一郎
浅野を獲得した理由
マジョルカにとって、浅野拓磨の獲得はフットボールのためにも、日本との絆を深めるためにも必要なことだった。彼らと日本人選手の契約は、もはや伝統的なものになっている。マジョルカの本拠地ソン・モッシュでは、これまでに大久保嘉人、家長昭博、久保建英がプレーし、浅野が4人目の日本人となるのだから。 ただマジョルカ番記者の私が、浅野を獲得すると聞いて最初に感じたことは、商業的というよりもスポーツ的な意味合いだった。というのも、ジャゴバ・アラサテが新たに率いる今季のマジョルカは、サイドでチャンスを生み出せるスピードスターを求めていたのだ。ハビエル・アギーレが率いた昨季のチームは、ラ・リーガ1部残留を達成し、コパ・デル・レイでは決勝まで進出したものの、獣のように疾走する選手が明らかに欠けていた。 マジョルカの現陣容には、中央やサイドからDFラインを抜け出して深みを取れる選手がいなかった。昨季、攻撃を仕掛ける必要がある場合には、その欠点が何度も響くことになったのだ。アギーレは昨夏の市場で、速攻にも有用なそういった選手を求めずに島のサポーターから批判を浴びた。冬になってようやく、トリノからのレンタルでクロアチア人FWネマニャ・ラドニッチを獲得したものの、この補強は残念ながら期待外れに終わっている。 だからこそ、マジョルカの浅野獲得はスポーツ面においても納得できることだった。この新たな日本人は、チームのレベルを引き上げられる特徴を持っているのだから。 浅野は中央でもプレーできるが、私の予想ではサイド攻撃の鍵を握るのではないだろうか。現在、マジョルカが擁するウィングは、カンテラーノ(下部組織出身)の21歳FWハビ・ジャブレスのみ。クラブは今夏、さらなるウィングを獲得するのだろうが、浅野は重要な役割を請け負うと見ている。ドイツやセルビアでプレーしてきた経験を持つ彼は、日本から直接やって来るよりもスペイン・フットボールへの適応が早いはずだ。