ネクライトーキー／写真＝垂水佳菜

ネクライトーキーが全国ツアー〈「踊れ！ランバダ」リリースツアー 「ゴーゴートーキーズ！ 2023秋」〉を開催。ここでは11月26日のZepp Shinjuku（TOKYO）公演の様子をレポートする。

徹頭徹尾、観客を楽しませるために力を注いでいる彼らがそこにいた

ネクライトーキー／写真＝垂水佳菜

「もっと自分も堂々としていたい」 「強くありたい」 これはネクライトーキーのもっさ（ヴォーカル＆ギター）がよく口にしていた言葉だ。インタビューでライヴを振り返ってもらうと、彼女はステージ上での立ち振る舞いにいつも自信がなさそうで、フロントマンとしての自分の在り方に100点をあげられる感じではないように思えた。過去には対バンライヴで競演したバンドと自身を比較し、ステージ上で涙を流したこともあった。しかし、今回のライヴに関しては自分を褒めてあげてほしい。お節介ながら終演後にそう思ってしまうほど、ステージ上での彼女が、というかネクライトーキーそのものが強く逞しく輝いていた。 EP「踊れ！ランバダ」のリリースを記念して開催された今回のツアー。東京公演は11月26日にZepp Shinjukuで行われた。Zeppでワンマンライヴを行うのは、実はネクライトーキーにとって初めてのこと。その喜びをメンバー自身もひしひしと感じているからか、彼らのパフォーマンスは冒頭からいつも以上にアグレッシヴ。メンバー一人一人のテンションが高いというか、放つエネルギーにとにかく圧倒された。 「めっちゃかわいいうた」「ジャックポケットなら踊らにゃソンソン」「優しくなれたなら」を披露したあと、「初のZeppワンマン、よろしくお願いします！　この地下4階から新宿の地面に振動を与えるくらい盛り上がれたら……」と独特な言葉選びで意気込みを語るもっさ。その言葉通り、勢いを落とすことなく「北上のススメ」「誰が為にCHAKAPOCOは鳴る」「はよファズ踏めや」を立て続けに披露していく。自分たちが音を鳴らすことで、ただただ楽しんでもらいたい――そんな思いを胸にステージに立っているのであろう彼らと、「はよファズ踏めや」の〈そんじゃあステージにバンドがあがるのなら／ほらとにかくイカレた音でも出そうぜ〉の一節がリンクして思わずグッときた。 「俺が子供の頃に音楽を通じて感じたワクワク感みたいなものを、今日はみんなにも感じてもらいたくて」とライヴの中盤で朝日（ギター）が語る。だからと言って、観客を楽しませようとただ勢い任せにライヴをしている印象はなく、静と動のバランスを上手く取りながら、聴き手が楽曲を咀嚼し、自分の中で楽しむ余白みたいなものも感じられた。「動」の部分で言うと、毎度のことではあるが「許せ！服部」の爆発的な盛り上がりは圧巻だった。もっさや朝日だけではなく、藤田（ベース）、カズマ・タケイ（ドラム）、中村郁香（キーボード）のソロパートも、一瞬でも目を逸らすのが惜しいと思ってしまうほど。それぞれにほとばしる感情を演奏に昇華していたのが、とにかく見応えがあった。 「踊れ！ランバダ」にはネクライトーキーにしては珍しいしっとりとした曲が収録されているが、特に「今日はカレーの日」はライヴで聴いても新鮮だった。曲を聴いていると夕暮れ時の光景が目の前にありありと浮かんできたが、それは今のもっさに聴く人を頷かせてくれるような表現力が備わっているから。この日のもっさは、ヴォーカリストとして盛り上げるところは盛り上げて、聴かせるところでは徹底的に聴かせる、ということをいつも以上に器用にこなしていた印象もあり、そんな彼女からフロントマンとしての頼もしさが確かに感じられた。 続いて新曲「bloom」が披露されたが、キャッチーなメロディに再び心が躍る。ネクライトーキーの真骨頂ともいえるポップなアレンジが光る楽曲で、今後のライヴにおいて新たな起爆剤となり得るのではないかと思う。さらに大きな会場でこの楽曲を響かせる日もそう遠くないのでは――そう思わせるほど、バンドとしての成長を感じたのがこの日のライヴだった。 2020年にメジャーデビューを果たし、着実に夢の舞台に立ち続けている5人。思い返せば、今年の夏に〈RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZO〉でパフォーマンスを観た時、彼らはMCで「ライジングに出演することが念願だったんです！　でも中止になって……」と語っていた。もともとは2019年に初出演を果たす予定だったが、悪天候で中止になってしまったのだ。その後はコロナ禍でさまざまな制限があり、デビューから今日に至るまで、思うようにライヴができない葛藤もあったのではないかと思う。しかし、そういった悔しさを味わった過去も抱きしめながら夢の舞台を経験していくことが、確かな自信に繋がっていくのだろう。 あの日もっさが流した涙は見間違いだったのか？と思うほど、徹頭徹尾、観客を楽しませるために力を注いでいる彼らがそこにいた。こちらの想像し得ないようなスピードで進化し続けるバンド、それがネクライトーキーなのだ。