知的障害の子どもには「モラトリアム」が必要――9歳でできなかったことが、15歳でもできないとは限らない理由
「具体的な提案」と「評価」が大事
知的障害をかかえていると抱えていない子にくらべると「うまくできないこと」が目立つことがあります。 【マンガを読む】発達障害の子どもたちのリアル… たとえば小学校3年生でかけ算九九がうまくできなかったとしましょう。そうすると「この子にはできない」と判断されて、それができるようになるための努力が放置されてしまうこともあります。 『知的障害を抱えた子どもたち』にも書きましたが、9歳でできなかったとしても、それは15歳になってもできないことを意味するわけではありません。あきらめないで、その子に合った方法で積み重ねていくうちにできるようになることは意外に多くあります。これは学習のみならず生活習慣やコミュニケーション能力でも同じです。 必要なことは「知的障害」の診断でも「知能指数の数値」でもありません。何ができないのか、どこが苦手であるのかを考えて支援することが基本です。わが国ではよくあることですが障害を抱えている子どもに対して「長い目で見ましょう」「暖かく見守りましょう」という言葉が投げかけられることがあります。 私はそうした言葉を投げかける教育、福祉、医療などの関係者は信頼しなくてもよいと考えています。必要なことは何ができるかを子どもの状態を見て考え、「具体的に」すべきことを提案し、その結果何がどうなったかを「評価」することです。「長い目」「暖かい目」は具体的方策を出せない場合にしばしば出てくる言葉です。
指示が「理解」でき、「実行」できているか
たとえば3歳になって言葉が出てこない場合を考えてみましょう。 たとえば3歳になって言葉が出てこない場合を考えてみましょう。まず、耳が聞こえているかどうかを、音や声掛けに対する反応を見て確認しましょう。言葉が出ていなくても、言葉かけによる簡単な指示の理解や実行、たとえば「これ(ごみ)捨てて」が理解できる場合と、その理解すら難しい場合では、何をすべきかは変わります。指示が理解でき、実行できている場合には、知的障害はあったとしても軽度です。 指示が実行出来たらほめるという積み重ねからできること、日常生活やコミュニケーションの能力を育てていくことを考えたいです。 指示が理解できない場合には、シャワーのように言葉をかける、動作のまねを誘発するなどが基本になります。トイレなどの生活習慣も焦らずに積み重ねて、できたら思い切りほめるなども対応として挙げられます。 言葉の発達の遅れの場合には、知的障害だけではなく自閉症スペクトラム障害(合併していることもあります)を考えることもありますが、対応方法は似ているところが多いです。 子どもたちへの具体的な対応方法としては、筆者が監修して20万部に達したShizuさんの『発達障害の子を伸ばす魔法の言葉かけ』や、著者の『幼児期のライフスキルトレーニング』も参考にしていただけたらと思います。