来年元日から「銀嶺」続編 利常の治世、復興と重ね 本紙小説、安部龍太郎さん表明
能登半島地震の発生から1年となる来年元日付から、北國新聞社は直木賞作家・安部龍太郎さんの連載小説「銀嶺のかなた」の続編を開始する。物語の舞台は、加賀藩祖前田利家と2代藩主利長が生きた乱世から、文化を中心とした産業振興に力を注いだ3代藩主利常の治世へと移る。能登半島地震という未曽有の災害から創造的復興に挑む現代の石川・富山と、加賀藩の「国づくり」という歴史的事績を重ね合わせながら、「地方創生」を考える骨太の物語とする。 23日、安部さんが北國新聞社を訪れ、飛田秀一名誉会長に続編執筆の意向を表明した。 「銀嶺のかなた」は北國新聞創刊130年、富山新聞創刊100年を記念して2023年の元日にスタート。槍(やり)の又左(またざ)の異名を取った豪傑利家と、秀才肌で情に厚かった利長が親子の葛藤を抱えながら戦国の荒波を乗り切った姿を、今月7日に完結するまで全536回にわたり本紙単独で掲載した。挿絵は、はぎのたえこさんが担当した。 安部さんは「能登半島地震をきっかけに、地域の危機に政治は何をすべきかを石川県民、国民がより考えるようになった」と指摘。その上で「利常が加賀藩を守り、発展させるために使った最高の武器が文化であり、それが今も石川の魅力となっている。文化立国の先駆けだ」と話した。 続編では、利長から異母弟の利常への代替わりや、施政方針を巡る家臣間のせめぎ合い、幕府との水面下の争いなど、人間模様を掘り下げる考えを強調。「被災者の皆さんをはじめ、読者が前を向いて困難を克服しようと思ってもらえる物語にしたい」と述べ、被災地復興に思いを重ね、加賀藩隆盛の礎を築いた時代を丹念に描く意向を示した。 安部さんは1955(昭和30)年、福岡県生まれ。久留米工業高専卒業後、図書館に勤務する傍ら、90年「血の日本史」で作家デビュー。2005年「天馬、翔ける」で中山義秀文学賞、13年、七尾出身の画聖、長谷川等伯(とうはく)の生涯を描いた「等伯」で直木賞を受賞した。歴史時代小説の大作を次々と発表し、北國新聞夕刊で17~21年に小説「家康」を連載した。