新幹線の建設資金はどこから来るのか? 北陸新幹線「敦賀から先の開業」がだいぶ先になりそうなワケ
需要の少ない整備新幹線を整備する方法
国鉄民営化が決まると整備新幹線は凍結解除されますが、民営企業となったJRへの「赤字新幹線」の押し付けは「国鉄の二の舞」になるとの批判が出ます。そこで、鉄道公団(2003年に鉄道建設・運輸施設整備支援機構に改組)が整備主体となって建設を担当し、JRが営業主体となって運行を担当する上下分離方式が用いられることになりました。 その財源とされたのが、既設の新幹線4路線です。民営化当初、新幹線はJRではなく新幹線保有機構が保有し、JR3社(東日本・東海・西日本)に有償で貸し付けていました。最初に建設された北陸新幹線高崎~長野間の財源負担は、1989(平成元)年の政府・与党申し合わせにより「JRの負担については、50%とし、その財源としては、整備新幹線の営業主体となるJRが開業後支払う整備新幹線貸付料と新幹線保有機構において生じる既設新幹線のリース料の余剰を充てること」、残りは「国は概ね35%、地域は概ね15%を負担」することになりました。 しかし新幹線保有機構はJRの株式上場にあたり、東京証券取引所から資産の扱いを明確化するよう指摘があったため、JR各社が新幹線を計9.2兆円(簿価6.2兆円、国鉄債務負担分1.9兆円、譲渡時評価益1.1兆円)で買い取り、機構は1991(平成3)年に解散することになりました。 これを受けて機構のリース料を前提としたスキームは見直されることになり、最終的に1996(平成8)年、譲渡収入のうち評価益分(2051年度上期まで毎年度724億円)を国の分とみなし、これに公共事業関係費を加えた額を国の負担分、その半分を地方公共団体の負担分、JRは受益の範囲を限度とした貸付料で負担することとされました。 JRの受益とは、整備新幹線の営業によって得られる増収と、並行在来線の経営分離による赤字の減少を合計した収支改善効果を指します。儲からない新幹線を公共事業として建設する以上、JRは儲けの全額を貸付料として支払う仕組みです。 ただ貸付料は開業まで1円も発生せず、当初は金額も限られていたので、JRの負担分は将来の貸付料を担保とする借入金で賄われました。そのため2011(平成23)年度まで貸付料は借入金の返済に充てられていました。なおその後も年度ごとの事業費の変動は同様の借入金で調整しています。 以降は貸付料を直接、事業費に充てることが可能になり、2012(平成24)年6月に西九州新幹線武雄温泉~長崎間、北陸新幹線金沢~敦賀間、北海道新幹線新函館北斗~札幌間が着工します。