老後資金は老後も使いたくない!定年後も仕事を続ける人が注意すべき「在職老齢年金」
在職老齢年金とは
在職老齢年金とは、働きながら年金を受け取るとき年金の一部または全額が支給停止になる仕組みのことです。 支給停止になるのは、次のケースです。 ・基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超える 基本月額は、老齢厚生年金の「報酬比例部分」の月額です。 報酬比例部分の年額は、ねんきん定期便に記載されています。 総報酬月額相当額は、各月の「標準報酬月額」と直近1年の賞与の約1/12の金額との合計です。 年収の約1/12として概算してもいいでしょう。 基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えると、超過分の半分が支給停止(老齢厚生年金の減額)となります。
在職老齢年金による年金減額のシミュレーション
在職老齢年金によってどれだけ年金額が減ってしまうのか、モデルケースを使ってシミュレーションしてみましょう。 ・老齢基礎年金は月5万円、老齢厚生年金は月10万円(報酬比例10万円) ・毎月の標準報酬月額41万円、賞与は6月と12月に60万円づつ(1か月あたり10万円) 基本月額と総報酬月額相当額の合計額は次の通りです。 ・合計額=10万円+41万円+10万円=61万円 50万円を11万円超過するため、超過分の半額5万5000円が支給停止となります。 年金月額は15万円で老齢厚生年金が5万5000円支給停止となるため、受給額は9万5000円です。 標準報酬月額が最高額の65万円の場合、老齢厚生年金は全額支給停止となり、受給できるのは老齢基礎年金の5万円だけです。
繰り下げしても支給停止は逃れられない
在職老齢年金による支給停止を逃れるために、老齢厚生年金を繰下げて会社を辞めるタイミングで受給しようと考える人が散見されます。 しかし、支給停止分は繰下げしても増額しないため、支給停止逃れの繰下げ受給は意味がありません。
まとめにかえて
老後生活に不安を感じる高齢者は、65歳以降もあまり保有資産を取り崩さずに生活しています。 また、高齢者の就業率が高くなり、老後資金を取り崩さなくても生活できる人も増えています。 ただし、働きながら年金を受け取る場合、「在職老齢年金」による支給停止に注意が必要です。 本記事を参考に、老後の生活設計や働き方を検討してみましょう。
参考資料
・日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」 ・日本年金機構「年金の繰下げ受給」 ・内閣府「令和6年度 年次経済財政報告(第3章 ストックの力で豊かさを感じられる経済社会へ)」 ・内閣府「令和6年版 高齢社会白書)」
西岡 秀泰