見どころは気絶、11回の早替わりも!歌舞伎「大富豪同心」は“中村隼人ここにあり”という作品に
1月に松竹創業百三十周年「壽 初春大歌舞伎」夜の部で上演される新作歌舞伎「大富豪同心 影武者 八巻卯之吉篇」の取材会が、本日12月16日に東京都内で行われ、出演者の中村隼人、演出の松本幸四郎、演出・振付の尾上菊之丞が出席した。 【画像】中村隼人(他5件) 松竹創業百三十周年「壽 初春大歌舞伎」は、松竹創業130周年の幕開きを飾る公演。隼人は2019年からNHKの時代劇テレビドラマ「大富豪同心」シリーズに出演しており、今回の歌舞伎「大富豪同心 影武者 八巻卯之吉篇」でもドラマに続いて主演を担う。 江戸随一の豪商・三国屋徳右衛門の孫にして同心の卯之吉と、将軍の弟・幸千代を演じ分ける隼人は「いつか『大富豪同心』を舞台でと思っていましたが、まさか歌舞伎になるとは」と、公演が決まった際は驚いたという。卯之吉は“はんなり”とした性格で、刀を見ると気絶してしまう人物。隼人はドラマ「大富豪同心」が支持される理由を「時代劇といえば、リーダーシップがある主人公がすべてを解決するイメージ。でも『大富豪同心』では1人の力は小さくても、周囲のさまざまな人物に支えられて団結することで、1つのことに取り組んでいきます。卯之吉はなぜか助けてあげたくなる魅力を持った人。そういうキャラクターが今の時代に合っているのかなと」と分析する。また歌舞伎版の見どころについては「やはり、卯之吉の気絶が眼目です」と笑いつつ、「ドラマ版にはダンスシーンもあった。歌舞伎でも出演者みんなで踊れたら良いなと思います」と期待を込めた。 ドラマ版で甘利備前守役を担当する幸四郎は今回、演出と、ドラマ版で渡辺いっけいが演じる荒海ノ三右衛門役を兼任。初めて演出を担当する幸四郎は「お客様に“隼人くん、ここにあり”と思ってもらえるような作品にしたい」「彼のいろいろな面をお見せして『隼人くんにはこういう魅力もあるんだ』と驚いてほしい」と意気込みを語る。幸四郎が構想を「総踊りがあります。それと……早替わりが11回ある予定です」と明かすと、隼人は「多いですね!?(笑)」と驚きの表情を浮かべた。 ドラマ「大富豪同心」は隼人にぴったりだと思ったという菊之丞は「隼人さんのさまざまな魅力に触れられる作品の歌舞伎化に携われてうれしい」と喜びを口にし、「幸四郎さんからあふれてくるアイデアを具現化するお手伝いができたら」とコメント。また菊之丞は「お正月公演の夜の部で上演されるので、お客様が楽しい気分で帰れるような踊りをお見せしたい」と述べた。 隼人は12月22日まで京都・南座で「松竹創業百三十周年 京の年中行事 當る巳歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」、幸四郎は12月26日まで歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」の東京・新橋演舞場公演に出演中。タイトなスケジュールで新作に挑むことについて、幸四郎は「舞台をやりながらも、『大富豪同心』や、さらに先の公演のことも日々考えています。気持ちを切り替えながら取り組んでいますね。楽しんでいますよ」とコメント。隼人は「『大富豪同心』は僕の俳優人生に大きな影響を与えてくれた作品なので、妥協せずがんばりたい。思いがあれば、時間なんて関係ないです!(笑) 忙しい皆さんに集まっていただきますし、僕は疲れた顔をせず、座組の方々をはんなりと癒やしていきたい」と言葉に力を込めた。 会見では菊之丞が、隼人への期待を口にするひと幕も。菊之丞が「ドラマ『大富豪同心』を観たときの『良いな!』という感覚を、歌舞伎でお客様にどうお伝えするか考えていきたい。今回は早替わりで、顔も衣裳も同じなのに違う人物を演じることになるので、俳優の腕の見せどころですね」と話す。これを聞いた隼人は「テストを受けるような気分」と苦笑いを浮かべつつ、「皆様の期待を裏切らないよう、愛される卯之吉を目指します」と結んだ。 松竹創業百三十周年「壽 初春大歌舞伎」は、1月2日から26日まで東京・歌舞伎座で上演される。 ■ 松竹創業百三十周年「壽 初春大歌舞伎」夜の部 2025年1月2日(木)~2025年1月26日(日) 東京都 歌舞伎座 □ スタッフ 三、大富豪同心 影武者 八巻卯之吉篇 原作:幡大介「大富豪同心」(双葉文庫) 脚本:戸部和久 演出:松本幸四郎 演出・振付:尾上菊之丞 □ 出演 一、一谷嫩軍記 熊谷陣屋 熊谷直実:尾上松緑 相模:中村萬壽 源義経:中村芝翫 梶原平次景高:中村松江 堤軍次:坂東亀蔵 藤の方:中村雀右衛門 白毫弥陀六:中村歌六 二、二人椀久 椀屋久兵衛:尾上右近 松山太夫:中村壱太郎 三、大富豪同心 影武者 八巻卯之吉篇 八巻卯之吉 / 幸千代:中村隼人 美鈴:中村壱太郎 清少将:坂東巳之助 徳川家政:坂東新悟 真琴姫:中村米吉 銀八:尾上右近 溝口左門:中村吉之丞 乳母岩橋:市川青虎 箔屋寿太郎:市川寿猿 傅役大井御前:市川笑三郎 中臈富士島:市川笑也 坂内才蔵:市川猿弥 沢田彦太郎:中村亀鶴 本多出雲守:市川中車 荒海ノ三右衛門:松本幸四郎 三国屋徳右衛門:中村鴈治郎 ■ 松竹創業百三十周年「壽 初春大歌舞伎」昼の部 2025年1月2日(木)~2025年1月26日(日) 東京都 歌舞伎座 □ スタッフ 二、陰陽師〈大百足退治〉〈鉄輪〉 作:夢枕獏 二、陰陽師〈大百足退治〉 脚本:今井豊茂 二、陰陽師〈鉄輪〉 脚本:戸部和久 □ 出演 一、寿曽我対面 曽我五郎時致:坂東巳之助 曽我十郎祐成:中村米吉 大磯の虎:坂東新悟 小林朝比奈:尾上右近 化粧坂少将:澤村宗之助 八幡三郎:澤村精四郎 近江小藤太:中村吉之丞 梶原平次景高:大谷廣太郎 梶原平三景時:松本錦吾 鬼王新左衛門:市川中車 工藤左衛門祐経:中村芝翫 二、陰陽師〈大百足退治〉 藤原秀郷:尾上松緑 大蜈蚣の魂魄:坂東亀蔵 永薙姫:中村魁春 二、陰陽師〈鉄輪〉 安倍晴明:松本幸四郎 源博雅:中村勘九郎 徳子姫:中村壱太郎 呑天:大谷廣太郎 蜜夜:市川笑也 蜜魚:澤村宗之助 海老:澤村精四郎 青牙:市川青虎 暗妃:市川笑三郎 赤鬼:市川猿弥 藤原兼家:市川門之助 蜜虫:市川高麗蔵 蘆屋道満:松本白鸚 三、恋飛脚大和往来 玩辞楼十二曲の内 封印切 新町井筒屋の場 亀屋忠兵衛:中村鴈治郎(2~14日) / 中村扇雀(15~26日) 丹波屋八右衛門:中村扇雀(2~14日) / 中村鴈治郎(15~26日) 傾城梅川:片岡孝太郎 肝入由兵衛:中村寿治郎 阿波の大尽:大谷桂三 槌屋治右衛門:中村東蔵 井筒屋おえん:中村魁春