とにかくキャラクターが個性的な『逆転裁判』シリーズの魅力を『逆転裁判456 王泥喜セレクション』とともに1万字で語りたい
異議あり! 説明するまでもないかもしれませんが、これは人気推理ゲーム『逆転裁判』から生まれた名台詞であり、逆転裁判のキモである証言のムジュンを指摘した際に発せられる言葉。その言葉の響き、発せられた時の爽快感は格別で、本シリーズを象徴するセリフと言っても過言ではありません。 『逆転裁判456 王泥喜セレクション』画像・動画ギャラリー 普通に発しているだけでもかなりの爽快感を持つ「異議あり!」ですが、特に、事件の真相やトリックが脳裏に閃いた時に繰り出す「異議あり!」の心地よさは別格。思わず一緒に声を出して叫びたくなってしまうほどです。 有罪がほぼ確定していると思われる状況にある被告人を弁護し、真犯人の企みを論理と物的証拠で打ち砕いて事件を文字通り逆転させていく姿は痛快としか形容しようがなく、この分かりやすくシンプルな構造こそが、本作の人気を不動のものにしたと言えるでしょう。 また、見た目が強烈というだけでなく印象的な動作をするキャラクターが多いのも『逆転裁判』シリーズの大きな特徴です。 殺人事件を取り扱うという性質上、冷静に考えると暗い気持ちになってしまいがちですが、個性的なキャラクターたちによる会話は基本的にギャグベースで進んでいくためプレイヤーに対して先へ先へとゲームをプレイしていきたい気持ちを湧き上がらせる一助となっているように思います。 そして届いた、シリーズナンバリングタイトルである『逆転裁判4』『逆転裁判5』『逆転裁判6』の3作品を収録した『逆転裁判456 王泥喜セレクション』発売決定の報せ。丁度流れゆく時の中でストーリーもうろ覚えになってきた頃合いです。 これは、久々に「異議あり!」を法廷と脳内に響き渡らせる快感に浸る、またとないチャンス。早速プレイし、本作の収録タイトルについて、『逆転裁判』というゲームシリーズそのものの魅力も含めてお話していければと思います。 文/DuckHead ■新章、開廷。それぞれに異なる特色を持つ収録タイトルたち さて、まずは『逆転裁判』シリーズと『逆転裁判456 王泥喜セレクション』に収録されているタイトルについて、簡単にご紹介しておきたいと思います。 『逆転裁判』シリーズを一言でまとめるならば、弁護士として法廷で殺人事件の真犯人を明らかにする推理ゲーム。 プレイヤーは殺人事件の容疑者として逮捕された依頼人を弁護することで、真相の究明にあたります。 そして、事件に隠された真実を詳らかにするために行うのが、法廷に立つ証人への尋問。 彼らの言葉に耳を傾け、ゆさぶりをかけて新たな証言を引き出したり、証言内容と手元にある証拠品を照らし合わせ、明らかにおかしいもの、ムジュンしている証言を見つけだし「異議あり!」と高らかに叫ぶことで、証人の誤解や嘘が明らかとなり、裁判は進んでいきます。 そして、事件の真相に辿り着き、被告人に対して正当な判決が下されればゲームクリア。晴れて事件は解決です。 ちなみに、ムジュンの指摘を間違えてしまうとペナルティがあり、ゲージやカウンターが減少。一定回数間違えてしまうと、被告人は問答無用で有罪になってしまいます。この世の常識では俄かには信じがたい話ですが、被告人の命運は全て弁護士の手に委ねられているのです。 そのタイトルにもある通り、本シリーズの面白さは、ほぼ有罪間違いなしと思われている被告人の無実を証明して逆転無罪を勝ち取ることでしょう。裁判が始まったときには単純に見えた事件も、裁判を進めていくことでその複雑な真実が少しずつ見えていき、その全容を理解することができた瞬間の快感は、それはもう凄まじいものがあります。 ……裏を返せば、誤認逮捕によって成立しているゲームとなっているのが、本作の恐ろしいところ。 「ちゃんと捜査しろよ」「制度に問題があるだろ」という疑問も出てくるかとは思いますが、『逆転裁判』シリーズの設定を深掘りしてみますと、この世界の法廷は、まず最初に起訴された容疑者が有罪かどうかを短期間で決めてしまい、量刑はそのあとで判決するという “序審制度” と呼ばれるルールの中で動いているということが分かります。 冤罪を多く生み出してしまうことが容易に予想される、危うさしか感じられないこの制度は増加する凶悪犯罪に迅速に対処するために生み出されたものであると言いますから、平和そうに見えて中々に世紀末な状態にある『逆転裁判』シリーズの闇が垣間見えます。 また、この序審制度を制定しなければならないほどの世紀末な治安のおかげで、警察はいちいち事件の捜査に人員を割くことができないため、彼らに代わって現場に赴いて証拠品を集めることも弁護士の仕事。この世界の弁護士は、探偵の要素も担っているのです。 そんな本シリーズの顔といえば、初代『逆転裁判』からの主人公である成歩堂龍一(ナルホドウ リュウイチ)、通称ナルホド君でしょう。 初代では新人弁護士として登場した彼の武器は、依頼人の無実を信じ抜く正義感。論理を重んじる法廷において感情論は心もとないようにも感じられますが、彼のこの心が逆転の発想を生み出すのですから、間違いなく彼の最大の武器であると言えるでしょう。 また、彼の相棒である霊媒師の綾里真宵とのやり取りは軽妙で、見るものを飽きさせません。ナルホド君とマヨイちゃんのペアは、『逆転裁判』シリーズと共に高い人気を誇ります。 ……余談にはなりますが、人気キャラでシリーズの看板であるナルホド君よりも、彼のライバルである御剣検事の方がファンが多いんじゃないかなという気はします。もっと言うと、私はゴドー検事の方が好きです。 更に話は逸れますが、御剣検事にも勝るとも劣らない人気をもつナルホド君は、格闘ゲーム『ULTIMATE MARVEL VS CAPCOM 3』では操作キャラクターとして参戦。なんと、スパイダーマンやウルヴァリン、デッドプールといったアメリカンコミックのキャラクターたちに混じって激戦を繰り広げています。 こちらでも彼の武器は変わらず裁判と「異議あり!」。弾が飛び交う乱打戦の中で裁判に持ち込むのはかなり厳しい条件になるのですが、不思議と裁判を繰り出したくなってしまうという、底知れぬ魅力のあるキャラクターです。 ■主人公交代を果たした『逆転裁判4』 閑話休題。初代『逆転裁判』から『逆転裁判3』まで、魅力タップリの主人公として長年シリーズを支えてきたナルホド君ですが、『逆転裁判456』に収録されているタイトルの1つである『逆転裁判4』の主人公は、彼ではありません。 本作の主人公の名は、王泥喜 法介(オドロキ ホウスケ)。 親しい人からはオドロキ君と呼ばれる彼は、初代『逆転裁判』のナルホド君と同じように新人弁護士として登場します。 かなりの熱血漢である彼の最初の依頼人は、なんとナルホド君。しかも、殺人事件の容疑者というのですから穏やかではありません。 更に驚くべきことに、ナルホド君は弁護士ではなくなっており、 “ピアノが弾けないピアニスト” という、耳馴染みのなさすぎる訳の分からない肩書になっています。 前作からは想像もつかない姿に身をやつしているナルホド君ではありますが、変わったのは肩書や見た目だけではなく、その言動すらも飄々としていて前作までとは最早別人。シリーズファンの方にしか伝わらない名前で恐縮ですが、4のナルホド君よりも芝九蔵虎ノ助の方が、3までのナルホド君に似ているような気さえしてきます。 あまりにも劇的な主人公の交代劇。初プレイ時、「3と4の間で何があったらこんなことになるんだよ」と、かなり衝撃を受けたことを今でも覚えています。 ……しかも、3の頃には影も形も無かった、ナルホド君の娘である成歩堂みぬきまでもが登場するのですから。止まんねぇなお前。 ちなみにみぬきは、本作におけるオドロキ君の相棒。推理小説で言うところのワトソン、これまでの『逆転裁判』で言うところのマヨイちゃんの立ち位置ですね。 様々な部分が変わってしまったナルホド君と新主人公として登場したオドロキ君。 『逆転裁判3』と『逆転裁判4』の間には7年もの月日が流れているのですが、その空白の時間に何があったのかというところが、本作のストーリーの主軸となります。 そして、オドロキ君の特別な能力として『逆転裁判4』から新たに登場したのが、“みぬく”。これは、本作における目玉システムの1つであり、特定の状況で発動します。 この能力を使うことでオドロキ君は、証人がウソの証言や隠したいことがある場合に現れる動作のクセを指摘することができるようになり、それによって証人から新たな証言を引き出すことが可能となるのです。 これで法廷が大きく揺れ動くんですから、とんでもない話です。ある意味クセが凄い。 また、Nintendo DSにて発売された本作の目玉の1つが “カガク捜査” 。DSのウリであったタッチパネルとタッチペンを使って画面上に粉を撒き、DSに搭載されているマイクに息を吹きかけることで粉を吹き飛ばして指紋を検出するといったような形で、DSの仕様を利用した意欲的な遊びが用意されていました。 このコレクションでは流石に息を吹きかけることはできませんが、どこに証拠が残っているのかを調べるカガク捜査の面白さは今回も健在です。 また、本作の鍵を握るのが先ほど少し登場した序審制度。この世紀末な制度に裁判員制度が絡みつつ、ストーリーが進行していきます。 ちなみにですが、『逆転裁判4』が発売された当時は、現実世界でも裁判員制度が実施されるようになることが話題になっていた頃だったように思います。まぁ、『逆転裁判4』の裁判員裁判は現実の物とは大きく違うんですけどね。……それを言い出してしまったら、『逆転裁判』の裁判自体が現実とは大きく違うんですけれども。 ■ナルホド君が弁護士として本格復帰『逆転裁判5』 続いての収録タイトルは『逆転裁判5』。 事件の真実を追及することではなく、法廷での勝敗を争うことが目的となってしまった「法の暗黒時代」と呼ばれる状況の中で繰り広げられる弁護士たちの戦いを描いた本作は、冒頭からいきなり法廷爆破事件が発生するという中々に衝撃的な展開で幕を開けます。 そんな本作では、前作で弁護士を辞めていたナルホド君が弁護士として本格復帰。オドロキ君も所属する成歩堂なんでも事務所の所長として、事件の究明にあたります。 また、前作では初々しさがかなり強かったオドロキ君も心なしか凛々しくなり、貫禄が出てきたような気がします。 それもそのはず、本作からオドロキ君にも後輩の弁護士ができたのです。 成歩堂なんでも事務所の最若手であるその弁護士の名は、希月心音。 顔芸……もとい感情が表現豊かで明るく前向きな彼女は、アメリカの大学を飛び級で卒業した人物で、周囲からはココネちゃんと呼ばれています。 大学では心理学を学んでいたココネちゃんは、他人の言葉の中に潜む感情を聞き取れるという特別な力を持っており、証言と感情のムジュンを指摘することで、事件解決への井戸口を手繰り寄せることができます。これが本作からの大きな追加要素の1つ。 また、事務所では明るく前向きなココネちゃんですが、本作のキーとなるのは彼女の心の中にトラウマとして強く残る過去のとある事件。この事件と現在の事件がつながり、物語は大きな展開を見せるのです。 そして、Nintendo DSにて発売された『逆転裁判4』に対し、『逆転裁判5』が発売されたのはNintendo 3DS。グラフィック面にも大きな変化が見られ、『逆転裁判4』まではイラストで描かれていたキャラクターたちの立ち絵が、本作から3Dで表現されています。アニメーションが挿入されるのも特徴的ですね。 ナルホド君、オドロキ君、ココネちゃんという三人の弁護士を主役とするストーリーが描かれる本作は、賑やかさも増していて、シリーズの旨味も凝縮されているように思います。 ■異国の地であるクライン王国が舞台『逆転裁判6』 最後の収録タイトルは、『逆転裁判6』。これは、『逆転裁判』シリーズの最新のナンバリングタイトルでもあります。 本作の舞台の1つとなるのが、異国の地であるクライン王国。 かつて助手として活躍していた霊媒師のマヨイちゃんを迎えに行くためにこの国を訪れたナルホド君は、運命のイタズラで、この国の裁判に弁護士として参加することに。 霊媒の力が強く信じられているこの国では、姫巫女の霊媒による裁定が行われており、これに対して異議を唱える弁護士は、彼らの教え、彼らの信仰に対して異議を唱えているのと同義とみなされてしまいます。 さらに、弁護の結果被告人の無実が証明されなかった場合、弁護士は弁護罪という罪に問われ、被告人と同じ量刑に処されるという法律がクラインにはあるのです。 つまり、被告人に死罪が言い渡されれば弁護士も死罪というわけで、弁護士が命を懸けた職業になっているのです。こんな法律がある国ですから、被告人の弁護を名乗り出る者はいつの間にかいなくなってしまい、長らくクライン王国では弁護士が存在すらしていませんでした。 無実であったとしても、罪に問われてしまった時点で弁護の余地なく罪を受け入れなければならないこの国の法廷に付いた異名は、“あきらめの法廷”。弁護士にも強いペナルティが課される絶望的なこの状況下で、ナルホド君は被告人の無罪を信じて戦うこととなります。 そして、このあきらめの法廷において、ナルホド君が打ち破らなければならないのが、姫巫女の霊媒による御魂の託宣です。これは、殺人事件の被害者が亡くなる直前に五感で感じ取ったもの全てが映像のように水鏡に映し出されるというものであり、本作を象徴するシステムの1つ。 霊媒と聞いて想像するようなものよりも、遥かに具体的で決定的に思われる託宣ですが、ここにもムジュンが潜んでいます。ムジュンを指摘して、姫巫女の託宣の不当性を証明することができなければ、被告人にもナルホド君にも未来はないのです。 クライン王国にて事件に巻き込まれまくるナルホド君の一方で、日本のオドロキ君とココネちゃんも、しっかりと事件に巻き込まれることに。2つの国を舞台として物語が展開していきます。 ほどのマヨイちゃんもそうですが、『逆転裁判6』には過去作のキャラクターたちが多数登場するため、そのストーリー展開も含めて、『逆転裁判4』から続く、オドロキ君3部作の完結編と言っても差し支えない内容となっています。 ■『逆転の帰還』と『時を超える逆転』 さて、これらのタイトルに加えて、本コレクションでは、『逆転裁判5』および『逆転裁判6』のダウンロードコンテンツである特別編、『逆転の帰還』と『時を超える逆転』が収録されています。 推理ゲーム好きとしては名作として外せない『逆転裁判』シリーズ。このコレクション発売前の段階でナンバリングタイトルは全てプレイしてきていましたが、正直これらの特別編はノータッチだったので、今回が初プレイ。筆者としては特別編ならではの試みと思われる要素が多数見られる『逆転の帰還』が特に好きです。 ■インパクト絶大なシナリオとキャラクター さて、先ほどもお話しましたように、『逆転裁判』シリーズは殺人事件を主軸とする推理ゲーム。事件の構図の逆転こそが面白さの核となります。 証言に隠されたムジュンを指摘しながら、事件の真相に少しずつ迫っていくことが醍醐味の『逆転裁判』はプレイヤーにそのムジュンやトリックを閃かせるためのゲーム側からの誘導が非常に丁寧であるということも、印象的な要素のひとつです。 こういった推理の誘導の丁寧さにより、プレイヤーは事件の逆転解決に対して納得感を抱きやすくなっているため、本シリーズは推理ゲームにあまり触れていない初心者でも楽しみやすい作品であると言えるでしょう。 そのことは、本シリーズが『逆転検事』や『大逆転裁判』といったスピンオフ作品と共に長らく続いていることや、アニメ化や漫画化、実写映画化といった様々な展開をするほど、推理ゲームとしては異例ともいえる人気を獲得していることからも伺えます。 また、事件に隠されたトリックがゲームプレイをする上での最大のキモとなるのは、『逆転裁判』に限らず推理ゲーム全体を通じて言えることですが、本シリーズのシナリオは、数ある推理ゲームの中でも、事件の発生状況や被告人といった、シナリオの導入部分のインパクトが絶大です。 例えば、被害者の遺体が何故が屋台を引いている状態で発見されたり、 妖怪が殺人事件発生現場から立ち去る姿が目撃された直後に、その妖怪が空を飛んでいる姿が目撃されたり、 マジックショーの最中に、突如として出演者のひとりであるマジシャンの遺体が出現したり、……といった具合。 そして、先ほどもお話した、弁護士を辞めていたナルホド君が殺人事件の被告人として登場する回は、導入のインパクトが強いシナリオの最たるものであると言えるでしょう。 常に様々な仕掛けでプレイヤーを驚かせてくれる『逆転裁判』シリーズですが、私以上の『逆転裁判』ガチ勢である友人にとくに印象的だったシナリオを聞いてみたところ、『逆転裁判4』のとある回に登場する「音を使った謎解き」は新鮮で目から鱗だった……と、答えてくれました。初プレイから15年近く経った現在でも即答してくれたので、それほど印象的だったということなのだろうと思います。 そして、導入でプレイヤーを思いっきり引き込んでくるシナリオを更に盛り上げてくれるのが、キャラクター同士の会話。 法廷での証言と証拠品を交えた舌戦で事件の真相に迫るというゲームの性質上、ゲームプレイ中の多くの場面が会話で展開される『逆転裁判』。このことを考えれば、会話の面白さがゲームの面白さに直結しているのは明白です。 本シリーズで繰り広げられる魅力的な会話たちは、緊迫感や緊張感のあるものだけではなく、シリーズを通して語り継がれ続けているキャタツとハシゴの違いという結論の出ない議題があったり、『逆転裁判』シリーズのクリアを目指す中で、ほぼ全てのプレイヤーが経験するであろう “とりあえず相手に弁護士バッジをつきつけてみる” というあるあるをネタにしたセリフがあったりと、ネタも豊富に取り揃っています。 殺人事件を取り扱う『逆転裁判』シリーズには、冷静に考えると暗い気持ちになってしまうようなストーリーが多いんですが、こういった形で話そのものは基本的にギャグベースで進んでいくため、そこまでの暗さが感じられないというのも、プレイヤーに対して先へ先へとゲームをプレイしていきたい気持ちを湧き上がらせる一助となっているように思います。 そんな会話劇としての側面が強い逆転裁判シリーズにおいて忘れてはならないのが、ナルホド君たちが会話をする相手となる登場人物たちのインパクト、個性の強さでしょう。 見た目が強烈なキャラクターが多いのはもちろんのこと、印象的な動作をするキャラクターが多いのも『逆転裁判』シリーズの大きな特徴です。 ミツルギ、カルマ、アウチ、星威岳哀牙……。その動作は真似しやすいものが多く、友人がいつもの雑談の途中に彼らの動作を積極的に取り入れていたことを思い出します。 私の友人の奇行はともかく、中には見た目も動作もそこまで変じゃなく、普通に時代遅れのカウボーイの風を感じるカッコよさを持つキャラクターもいたりはするのですが、そういったキャラクターは極々まれ。 魅力的なキャラクターばかりではありこそするものの、彼らについて語る場合には大抵、「黙っていれば美人 or イケメン」「良い人なんだけど激ヤバ」とか、「普通かと思ったらクズだった」「クズかと思ったらドブクズだった」だの、エキセントリックな感想ばかりが口からあふれ出てきます。 会話が主体であるゲームの場合、会話の相手となるキャラクターの印象が薄いと、会話そのものが無味無臭になってしまいがちですから、『逆転裁判』シリーズのキャラクターがあからさまなほどに個性的に描かれるというのは、ある種の必然であると思います。逆転裁判のキャラクターの濃さは、少年時代のナルホド君が着ているシャツに描かれているゲーム『ふしぎ刑事』の流れを引き継いでいるように思いますね。 さらに、推理小説や推理ゲームを進めていく上でありがちなのが、物語の中で誰かしらの名前が出た時に、「それって誰だったっけ?」となり、話を読み進める手を一旦停止させて、どこかに記載されている登場人物の説明に目を通す時間が発生すること。 しかし、『逆転裁判』に登場するキャラクター達は、見た目のインパクトの強さだけでなく、名前そのものも何かしらのダジャレになっているなど覚えやすいものが多いため、こういった事態の発生がかなり抑えられているように感じます。 例えば、上図のクライン王国に着いたナルホド君を観光旅行に案内する少年は、その見た目こそインパクトがありませんが、名前がボクト・ツアーニ(僕とツアーに)という覚えやすすぎるものであるため、出会ってすぐにプレイヤーの頭の中にインプットされるのです。 特に、『逆転裁判4』に登場する、北木滝太(きたきたきた)と並奈美波(なみなみなみ)という名前のセンスには感動すら覚えました。正直、初プレイから15年も経つと、彼らの見た目の記憶は薄れ、うろ覚えになってしまっていたんですが、名前だけはずっとハッキリと覚えていました。あまりにも口馴染みが良すぎます。 ■プレイヤーが対面し続けなければならない存在、検事たち さて、見た目、性格、名前といったキャラクターを形作る様々な要素が強烈な事件関係者たちですが、彼ら以上に、ゲームを進めていく上でプレイヤーが対面し続けなければならない存在がいます。 それが、被告人の無実を信じるナルホド君たちとは立場上敵対関係になることが多い、検事たちです。 警察の捜査情報を元に、裁判で被告人の有罪を立証しようとする彼らは、弁護士と並ぶゲームのもう一つの顔とも言える存在であり、彼らの魅力が作品の魅力に直結している部分があります。 実際、先ほども少しお話しましたように、ナルホド君の親友でありライバルである本作屈指の人気キャラクター、ミツルギ検事が登場するとテンションが上がってしまうというものです。 例えば、こちらの阿内(アウチ)検事。 彼はシリーズ作品の第一話に必ず登場する検事であり、その威張りっぷりで多くのプレイヤーに苛立ちを与えつつ、溢れんばかりの圧倒的小者感から、被告人の逆転無罪を勝ち取る快感を教えてくれるキャラクター。素晴らしい斬られ役です。 下の名前は武文だったり文武だったりするんですが、そんなことはどうでもいいことでしょう。 続いては、『逆転裁判4』でオドロキ君の主な舌戦相手となる牙琉(ガリュウ)検事。 彼の特徴は、甘いマスクから繰り出されるキザな甘い言葉。 また、『逆転裁判4』では、検事でありながら “ガリューウエーブ” という大人気ロックバンドのリーダーもしているという、とんでもなく豪勢な二足の草鞋をはいたキャラクターでもあります。法廷で披露するエアギターがこれまたクール。 チャラすぎる見た目に反して性格は超真面目という、外身も中身も完全なるイケメンです。そういう逆転の構図はズルいですって。ギルティー。 そして、とんでもない二足の草鞋と言えば忘れてはいけないのが、『逆転裁判5』のメイン検事である夕神(ユウガミ)検事。 夕神検事が履いている二足の草鞋とは、“検事” と “囚人”。なんと彼は、過去の事件において有罪を宣告されており、『逆転裁判5』の作中では殺人罪で服役している身。 そのムジュンした肩書などから「法曹界の歪み」の象徴であるとして彼につけられた異名が、 “ユガミ検事”。 肩書、見た目、動作、発言……私の中ではキャラクターとして完璧です。ゴドー検事と同じくらい好きです。既に私の趣味がバレていそうな気がします。 しかも、ユガミ検事の肩に乗っている鷹のギンがまた最高なんですよね。かわいい。賢い。かっこいい。かわいい。 ■リメイクならではのファン歓喜要素 本作の新機能のひとつが、“タイトルランチャー”。 これは、各タイトルに収録されたそれぞれのエピソードをチャプター単位で選んで遊べるというもの。 『逆転裁判』に限らず、推理ゲームの難点として、一度クリアしてしまうと周回プレイがしにくかったり、「あの話だけプレイしたいんだよなぁ」という気持ちになったりするということが挙げられるのですが、この機能を使えば、好きな話を好きなところからプレイすることができるため、非常に助かります。 更に、本作では「推理ゲームは苦手だけど、ストーリーは楽しみたい」というプレイヤーに向けて、文字送りやムジュンの指摘といったものを全て自動で行ってくれる “ストーリーモード” が搭載されているため、『逆転裁判』シリーズのシナリオを、ドラマを見ているような感覚で楽しむこともできます。 「推理が苦手でプレイできない人がいるならば、推理をさせなければいい」という逆転の発想から生まれたかのようなモードですね。 そして、本作にはスペシャルコンテンツとして様々なお楽しみ要素が収録されています。『逆転裁判456』のBGMや『逆転裁判123』で流れる名曲たちのオーケストラ演奏を聴くことができる “オーケストラホール”や、設定画集やキービジュアル、ムービーなどを鑑賞できる “アートギャラリー” といったモードがある中で、私が特に気になったのが、 “アクションスタジオ”です。 ここではゲームに登場するキャラクターたちのアクションやボイス、背景などの様々な要素を自由にカスタマイズしてシチュエーションを作り上げることができます。ゲームでは見られない組み合わせを生み出すことも可能であり、その自由度はかなり高いと言えるでしょう。 ……ただ、アクションスタジオはその性質上、ストーリーのネタバレのオンパレードなモードでもあります。クリアしてから楽しむべき要素ですね。クリアして見つけたお気に入りのキャラクターを存分に愛でていきましょう。 さて、以前にクリアしたことのあるゲームのリメイク作を購入して遊ぶとなると、そこには確固たる理由が必要になってきます。特に『逆転裁判』シリーズのような推理ゲームだと尚更で、購入の前に一度結末を知ってしまっているという大きな壁が立ちはだかるもの。 そういった中で、今回ご紹介してきた『逆転裁判456』は、『逆転裁判』シリーズの3つのタイトルで遊べるだけでなく、シリーズのファンのテンションが上がるような要素がてんこ盛りのタイトルとなっており、購買意欲が刺激されます。 更にはストーリーモードからも、「いちいち選択肢選ぶの面倒だけど、あの話が好きだからもう一回見たいんだよなぁ」という人にも向けた意図が感じられ、こちらもまたファンにとって嬉しい特典であるように思います。 未プレイの方はもちろん、既プレイの方も、本コレクションで当時の思い出に浸りながらプレイしてみてはいかがでしょうか。
電ファミニコゲーマー:DuckHead
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