能登地震被害状況「現実と思えず」 輪島に調査派遣の市職員【山口】
「現実とは思えない、不思議だった」と何度も口にした。能登半島地震で甚大な被害のあった石川県輪島市に、家屋調査などで派遣された山口市デジタル推進課の佐々木一志副主幹(45)と収納課の竹中雅俊主任主事(35)が活動を振り返った。 派遣期間は2月12~19日。活動場所は輪島市東部にある中山間地域の町野。罹災(りさい)証明の発行に必要な家屋調査として、専用タブレットを使い損傷状況を評価する作業だった。 町野の中心はほとんどの家屋が倒壊し、最もひどい被害状況だった。その中心から田んぼ沿いや山裾にある家へと調査範囲を広げた。補修されたばかりの橋やずれたアスファルトの道を危険だと感じつつ、支援のためと慎重に車を走らせた。 1日平均25軒を調べた。冠婚葬祭などで人々が集まるような昔ながらの家の多くが倒壊しているのを目の当たりにした。復旧・復興が進んでも元の風景に戻ることは難しく、地域の在り方も変わってしまうだろうと感じたという。
被災者と会話した佐々木副主幹は、特に印象的だったと70歳代男性のことを挙げた。男性は1階がつぶれた家屋の2階の窓から出入りしていた。とても元気で「せいせいした。一からやり直しだ」と言った。佐々木副主幹は「まだ、現実が受け止め切れていないのではないかと感じ、話をするうちに『そんなわけないだろう』という思いが込み上げた」と話す。男性は自身以外の家族全員がドクターヘリで運ばれていた。「被災者にとって震災は終わったわけではない」と言葉を選びながら振り返った。 2016年の熊本地震でボランティアをしたことはあるが、技術的な知識は無かった竹中主任主事は「体力以外に役に立つことがあるのかと不安だったが、これまでの震災から国が蓄積してきたノウハウのおかげで作業が円滑にできた」と話す。現実とは思えない被害状況をまざまざと見た経験は、今後の市の防災・減災に役立てたいという。 町野の被災者の中に「震災前は近くで地震が起きてもピンと来ず、備えができていなかった」と話す人がいたことに触れ、佐々木副主幹は「地震はいつどこで起きるか分からないと痛感した。日常から最低限の備えをしてほしい」と訴えた。 2人は被災地支援として少しでも寄付や能登特産品の購入を続けたいという。市は今後も定期的に職員を派遣し、支援していく。