ウシ1頭が6億円超え! 世界一高価なウシ「ネロール種」、なぜそんなに高くなったのか
世界一の牛肉輸出国ブラジルの“聖なる動物”、アマゾンの森林破壊の懸念も
2023年6月、ブラジルのアランドゥで行われたオークションで、背中のこぶと、おしゃれなスカーフのような「喉袋」が特徴的な白いメスのウシが史上最高額で取引された。この栄誉は世界の牛肉市場で大きな反響を呼んだ。とくに、慎重な交配を行って最高の環境でウシを育ててきたブラジルは祝賀ムードに沸いた。 ギャラリー:世界一高価なウシ「ネロール種」とは、1頭6億円超えも 写真8点 入札が終了した時点でついた価格はなんと430万ドル(当時のレートで約6億2000万円) 。古代からの家畜牛の一系統であるゼブー牛(コブウシ)の子孫で、ブラジリアン・ネロールという品種だ。 この一件は、ブラジルの現代の畜牛ビジネスにおける実力を見せつけた。現在、ブラジルは世界一の牛肉輸出国だ。というのも、中国でアフリカ豚熱が大流行して国内のブタの28%が死亡した後、同国が3年前からブラジルの牛肉を輸入するようになったためだ。 写真家で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあるカロリナ・アランテス氏によると、すでにブラジルは中国市場向けに4つの食肉解体処理場を新設しており、「業界は今絶好調」だという。 アランテス氏は、この成長産業を記録しようと、ブラジル高原の南部にある町、ウベラバに住むある家族を訪れた。そこでは、ウシは王様で、ゼブー牛は王冠を戴いていた。 「ウベラバでは、何もかもがゼブー一色です。ゼブー・ラジオにゼブー・レストラン」。8年間にわたって畜牛業界を取材しているアランテス氏はそう話す。 オークションで最高額がつくようなネロール種は、選ばれたゼブー牛だ。その値段は、単に肉だけにつけられたわけではない。こうしたウシは業界の未来を担う存在であり、繁殖目的のほか、後で述べるように牧畜による環境への負荷を減らすかもしれないという期待も込められている。 畜牛は、過去65年にもわたって、アマゾンの熱帯雨林破壊の主な要因となってきた。現在、ブラジルには2億2500万頭のウシがおり、今後20年で35%拡大すると推測されている世界の牛肉市場の主役であり続けるとみられている。しかし、今回のネロール種のような高級なウシは、本当に変化をもたらすのだろうか。