JALと東工大、国内線A350や787搭乗順短縮 機内の混雑緩和で定時性向上
日本航空(JAL/JL、9201)は9月11日、国内線の搭乗方法をエアバスA350-900型機など中大型機で見直した。搭乗時の機内混雑を緩和する取り組みで、東京工業大学との共同研究結果を反映した。従来の方法と比べ搭乗時間が平均約50秒短縮されて定時性向上につなげられるほか、乗客が機内混雑で感じるストレスの緩和につながるという。 【写真】JAL最多座席数のA350-900 X12仕様の機内 ◆グループ4まで4段階搭乗に 搭乗方法を変更した機材は、羽田発着の国内幹線を中心に投入されているA350-900やボーイング787-8型機といった、機内の通路が2本ある「ワイドボディー(広胴、双通路)」機。A350-900と787-8のほか、一部便に投入している国際線機材777-300ER、中型機767-300ERなどが対象になる。 これまでの搭乗順序は、赤ちゃん連れなどの「事前改札」が最初で、上級会員や国内線ファーストクラス客など「グループ1-2」が対象の「優先搭乗」、後方の座席番号40番以降と非常口座席の「グループ3」、20番以降の「グループ4」と続き、最後はすべての乗客が対象の「グループ5」と計5段階に分かれていた。 変更後は「事前改札」と「優先搭乗」までは同じで、「グループ3」で40番以降と窓側席のA列とK列、非常口座席の乗客が搭乗し、「グループ4」ですべての乗客が搭乗する。これにより「グループ5」は対象機材では廃止となり、従来より1段階少ない4段階の搭乗になった。 PBB(搭乗橋)の使用方法も見直した。対象機材のうち、767以外は2本のPBBを使い、機体左最前方の「L1」ドアと、左前方2番目の「L2」ドアから搭乗するが、これまでは乗客が利用するクラスごとに分けており、ファーストクラスとクラスJの乗客がL1ドア側、普通席の乗客がL2ドア側のPBBを通っていた。 変更後は普通席のうち、進行方向右通路に面したF・G・H・J・K列席も、ファーストクラスやクラスJと同じL1ドア側から搭乗。L2ドア側のPBBは普通席の左通路側A・B・C・D・E席の乗客のみ使用する。 一方、767による運航便はL1ドアのPBBのみを使うため、搭乗順序のみ変更した。 PBBの使用方法を見直すことで、機内の混雑が緩和されることに加え、L2ドア側のPBBを早く外すことができ、出発準備の時間を短縮できるという。 変更後初日となった11日は、羽田を正午に出発する那覇行きJL915便(A350-900、登録記号JA01XJ、3クラス391席)の乗客が348人(ファースト12人、クラスJ45人、普通席276人、幼児15人)。事前改札が午前11時41分、優先搭乗が同49分に始まり、最後の乗客が同57分に自動改札機を通過し、正午に搭乗完了。航空路混雑の影響で、午後0時20分に11番スポットから出発した。 JALによると、A350-900の場合、搭乗開始からおおむね20分程度で全員が搭乗し終わるといい、11日のJL915便は事前改札からだと19分、優先搭乗からでは11分で搭乗が完了した。 ◆シミュレーションモデルで1000回検証 JALは東工大の環境・社会理工学院 建築学系 教育施設環境センター長の大佛(おさらぎ)俊泰教授とともに、2022年度から共同研究を開始。A350-900で運航している羽田-那覇線、福岡線、札幌(新千歳)線の国内線計6便で調査を実施し、独自の搭乗シミュレーションモデルを構築した。 このシミュレーションモデルを活用し、乗客の年齢や性別、グループ客か個人客か、手荷物の有無、手荷物の種類や個数など、さまざまなシナリオでシミュレーションを約1000回実施。大佛教授によると、欧米でも搭乗順序に関する基礎研究はあるものの、通路が1本のナローボディー(狭胴、単通路)機の事例だという。今回はワイドボディー機の機内に360度カメラを6台設置することで、搭乗時に乗客が通路のどのあたりで渋滞するかなどを細かく分析したという。 シミュレーションでは、搭乗方法12種類とPBBの使い分けを2種類設定。搭乗時間の短縮だけでなく、乗客への負担やPBBを取り外す作業など、実際の運航を考慮して今回の搭乗方法を選定した。 JALの国内線で、ワイドボディー機による運航便はJAL単体で約46%で、小型機による離島路線なども含めたグループ全体では約22%。今回の研究は、座席配列が2種類あるA350-900のうち、2019年9月1日に就航した「X11」と呼ばれる3クラス369席の機材が、満席になる状況をシミュレーションした。 JALによると、今回の搭乗順序の変更は当面国内線のワイドボディー機のみだが、ナローボディー機への展開が可能な内容があるかなどを今後検証。国際線は現在のところ搭乗順序を見直す予定はないものの、顔認証技術の活用などで搭乗時間の短縮を図る。
Tadayuki YOSHIKAWA